暁 〜小説投稿サイト〜
永遠の謎
609部分:第三十五話 葬送行進曲その八
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第三十五話 葬送行進曲その八

「そして必要とあらばオーストリア皇后とも連絡を取ろう」
「あの方ともですか」
「連絡を取りそのうえで」
「いざという時はあの方をお救いする」
 そうすると。ビスマルクは決意を述べた。
「私はそうする」
「それはドイツの利益になりますか」
 側近の一人がビスマルクが常に求め考えていることについて問うた。
「そのことは」
「なる。それ以上にだ」
「それ以上にですか」
「あるのですか」
「言った筈だ。あの方はドイツの宝なのだ」
 政治的にはいがみ合いながらもだ。ビスマルクは王をこう評価していた。
 その評価でだった。王について考えてだったのだ。
「その宝を失う訳にはいかないのだ」
「芸術によるものでしょうか」
 その宝とはどういう意味かというのだ。
「あの方の存在は」
「それだけではないのだ。あの方にあるのは」
「芸術を超えている?」
「そうした方なのですか」
「そのことを今わからない者が多いのは残念だ」
 ビスマルクはまたしても苦渋の言葉を漏らした。
 そうしてだった。彼は。
「だがそのことは後になってわかるのだが」
「では今はその為にもですか」
「あの方の危機には」
「あらゆる手段を使ってお助けする」
 プロイセンとバイエルンの間柄を超えた、心に基く言葉だった。
「わかったな」
「はい、それでは」
「その時には」
 こうしてだった。ビスマルクはいざという時に備えることをはじめた。しかしそれは表に見せずにだ。水面下で進められるのだった。
 これはベルリンだけではなかった。ウィーンでもだ。
 皇后はミュンヘンでの密談の話を聞いてだ。こう周囲に話した。
「私はまたバイエルンに行くかも知れません」
「あの国にですか」
「再びですか」
「はい、そうします」
 こうだ。女官達に話すのであった。
「何かあればその時は」
「そういえばバイエルンではどうもです」
「宮廷で不穏な話し合いが行われているとか」
「国王について」
「あの方に何かあってはなりません」
 だからこそだ。皇后も動くというのだ。
 そしてだ。皇后もまた言うのだった。
「バイエルンの、そして殆どの者達も」
「どうなのでしょうか」
「ミュンヘンは」
「あの方を理解していないのです」
 そうだというのだ。バイエルン王をだ。
「理解できないのです。あの方はあまりにも尊いが故に」
「ではあの浪費は」
「重要なことではないのですか」
「あの様なものは本当に何でもありません」
 皇后はビスマルクと同じことを言った。自分が意識しないうちに。
「大事なことはあの方をお救いすることです」
「だからこそバイエルンにですか」
「赴かれますか」
「そうします。その時は」
 
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ