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永遠の謎
608部分:第三十五話 葬送行進曲その七
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第三十五話 葬送行進曲その七

「そしてです」
「退位もだな」
「陛下は一年と一日だけです」
「正常であられなくなった」
「それだけでいいのです」
「それでバイエルンは救われるな」
 ルッツは難しい顔だがそれでも述べた。
「そうなって」
「はい、ですからこれで如何でしょうか」
「そのグッデン氏に会いたい」
 ルッツはその難しい顔でまた述べた。
「是非な」
「畏まりました。それでは」
 こうしてだった。ミュンヘンではまた動きがあった。だがこのことはビスマルクには筒抜けでだ。彼はベルリンにおいてこう言うのだった。
「何もわかっていないな」
「ミュンヘンの動きですね」
「そのことですね」
「そうだ。何もわかっていない」
 今回も側近達にだ。彼は言っていた。
「彼等はあの方のこともドイツのこともわかっていないのだ」
 そしてだった。ビスマルクは言った。
「バイエルンの。そして今だけしか考えていない」
「ドイツのこと、未来のことはですね」
「考えていないのですね」
「見えていないし聞こえてもいない」
 それならばだというのだ。
「それでどうして考えられるのか」
「では彼等は誤っているのですか」
「見えず聞こえていないが故に」
「そうだ。あの方の浪費は浪費ではない」
 では何かというと。ビスマルクにははっきりと見えていたし聞こえてもいた。
 だからだ。こう言うのだった。
「必要な経費だ。そしてだ」
「そして?」
「そしてといいますと」
「バイエルンの財政破綻なぞ最早どうとでもなる」
 ドイツの宰相としての言葉だった。
「些細なことだ」
「彼等はそうは思っていない様ですが」
「何もわかっていない証拠だ」
 ビスマルクは素っ気無く述べた。
「今のドイツをだ」
「バイエルンはドイツの中にあることがですか」
「そのことが」
「彼等のうち何人かはそうなることをあえて望んだのだがな」
 ホルンシュタインのことだ。ビスマルクの縁者でもある彼だ。
 ビスマルク自身はそのことに対して否定しなかった。しかしだった。
 ここでだ。彼はこう言うのだった。
「しかしそれがわかっていないのだな」
「妙な話ですね、それはまた」
「自らドイツに入ったのにそれがわかっていないとは」
「矛盾しますね」
「彼等はバイエルンしか見えていないのだ」
 ビスマルクにはわかっていることだった。彼にはだ。
「私は欧州全体を見てあの方は別の世界も見ているがな」
「しかし彼等はバイエルンしか見えていない」
「だからですか」
「そのことがわからないのですか」
「そうだ。そしてその彼等がだ」
 どうするのかを。ビスマルクは苦い顔で話す。
「あの方を玉座から退けようとする」
「そのことについて閣下は
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