601部分:第三十四話 夜と霧とその二十四
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第三十四話 夜と霧とその二十四
「それは一体」
「そなたは見えないか。ならいい」
見えないのなら仕方がない。そうした言葉だった。
「だがそなたは私と共にいるのだな」
「はい」
その通りだとだ。ホルニヒは恭しく一礼してから答えた。
「そうさせてもらいます」
「済まない。私に尽くしてくれるか」
「私は陛下の臣です」
だからこそだというのだ。それがホルニヒだった。
「そうさせてもらうことに理由はおありでしょうか」
「ないか。そう言うのだな」
「左様です」
「忠義か」
そしてそれに加えてだった。
「そして愛情か」
「それは」
「私は女性を愛せない」
そのことはどうしてもだった。王はだ。
婚姻も破綻して終わり今に至るまで妃もいない。王だというのにだ。
そのことについてもだ。王は今も話した。
「女性を愛するということ、それは私には」
「同じ女性を愛する様にですね」
「そうしたものを感じてしまうのだ」
だからこそなのだ。王は女性を愛せないというのだった。
「彫刻ならともかく。だがその彫刻も」
「どういった風になのでしょうか」
自然と王の言うことの意味を察してだ。ホルニヒは問い返した。
「その彫刻とは」
「芸術品を愛する様なものだ」
理想とする彫刻の様な女性像にしてもそうだというのだ。
そしてそれはどういったものかもだ。王は自分から話した。
「彫刻には理想を求めるな」
「美の理想ですね」
「私が女性に見るのは美だけだ。他のものは求めない」
そしてそれこそがなのだった。
「私の女性への感情だ。変わることはなかった」
今に至るまでだった。それは。
「女性については。美を見るだけであり」
「愛の対象ではないのですね」
「普通の男性が男の彫刻を見てどう思うか」
それもなのだった。
「美の理想を求めるだけだ」
「ではやはり陛下は」
「そうなのだ。私にとっては女性はそうしたものでしかない」
あくまで美だけだったのだ。
「それ以外のものはだ」
「感じられませんか」
「何もな。私はやはりおかしいのだ」
自分でだ。巷で言われていることを縄にしてだ。
王はそれに怯えてだ。こう話すのだった。
「女性を愛せない。それこそが狂気だ」
「陛下、それは」
「教会は言っている」
キリスト教は同性愛を絶対の悪としている。それこそ殺人に並ぶだ。
そしてそれに浸る王はだ。何かというのだ。
「人ではない。狂気の行いだと」
「神のお言葉だと」
「だから私は狂っているのかも知れない」
実際にそうかも知れないというのだ。
「オットーと同じく」
実の弟、この世で只一人の血を分けた兄弟だった。
「そしてそれ故に」
「陛下」
流石にだ。ホルニヒ
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