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永遠の謎
600部分:第三十四話 夜と霧とその二十三
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第三十四話 夜と霧とその二十三

「私はだ」
「ですが陛下は」
「まだ若いか」
「はい、ワーグナー氏は老齢でした」
 王の言葉に死を感じてだ。ホルニヒは慌てて言った。
「ですからその様なことは」
「いや、人生は生きている長さではない」
 そうしたものではないとだ。王は話すのだった。
「どれだけ満ち足りているかだ」
「それが重要なのですか」
「そうなのだ。生きている間にどれだけのことをするか」
「それが大事ですか」
「どれだけ生きていても無為なものなら」
 そうした人生は何かというと。
「何にもならない。人は果たすべきことがあるのだ」
「ワーグナー氏はそれを果たし終えられたからですか」
「眠った。そして私も」
 王自身もだった。
「果たし終えればだ」
「旅立たれるのですね」
「私のこの世で果たすことは決まっている」
 運命論だった。だがカルヴァンではない。
 王独自の、カトリックとはまた違った運命論を述べてだ。そのうえでだ。
 窓を見た。バルコニーのだ。そこには月があった。
 その白い満月を見てだ。王は言うのだった。
「それは月に照らされ」
「この月に」
「そうして導かれるものだ」
 それが王の果たすべきことだというのである。そのうえでだ。
 ホルニヒにだ。こんなことも述べた。
「彼がいてこそだった」
「ワーグナー氏が」
「そうだった。全てだ」
 旅立った友のことを思い。そのうえでだった。
 王は語っていく。王自身とワーグナーのことを。
「確かに彼は色々な問題を起こしたし衝突もした」
「それでもですか」
「私にとっては掛け替えのない存在、そう」
 それは何かというと。
「心でつながった親友同士だった」
「例え歳は違ってもですか」
「心での友情は年齢なぞ関係ない」
 王もわかったのだ。ワーグナーとの交流からだ。
 そうしてだ。また話すのだった。
「関係あることは心が共鳴するかどうかなのだから」
「だからこそ陛下はあの方と」
「偉大な芸術家だった」
 ワーグナーへの評価は普遍だった。王の中では。
 そしてその普遍の評価をだ。今ホルニヒに話すのである。
「その芸術は不滅だ。そして魂も」
「魂もですか」
「永遠のものもあるのだ」
 王が常に考え思うことだった。
 そのことを述べながらだ。ワーグナーのことを考えてだった。
 王は呟く様にだ。述べていった。
「彼の芸術はバイロイトに残り私の中に残り」
 そうしてだった。
「私は今いるこの城達にも残している」
 こう言ってだった。壁にある絵画を見た。
 それもまたワーグナーだった。タンホイザーにローエングリン、トリスタンに指輪だ。
 そしてパルジズァルもある。その中でだった。
 一枚の絵画、王が描
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