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永遠の謎
60部分:第四話 遠くから来たその十三
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第四話 遠くから来たその十三

「それもです」
「そのこともですか」
「住む家も用意できます。それに」
「まだあるのですか」
「貴方が芸術に専念できるように」
「私の芸術に関してですか」
「王は全てを取り計らって頂けるのです」
 これもだった。王が神にも、そして己にも誓っていることだった。王はワーグナーの為にだ。全てをしようと誓っていたのだ。
 そしてだった。男爵はさらに話してきた。
「ですから。如何でしょうか」
「ミュンヘンに」
「そうです、どうされますか」
「信じていいのですね」
 そこまで彼にとって都合のいい話があるのかどうか。これまでの辛酸を舐めてきた人生でだ。ワーグナーはこのことをいぶかしむのだった。 
 そしてだった。彼はまた言った。
「そのことを」
「はい、何でしたら」
「何だというのですか」
「これを」
 今度出してきたものは。それは。
 券だった。ミュンヘンまでのだ。旅行券であった。
 それをワーグナーの差し出してだ。男爵は再び話すのだった。
「どうぞお使い下さい」
「そういうことなのですね」
「王が貴方を待っておられます」
 王の名前をだ。ここでも出す。
「どうか。ここは」
「わかりました」
 その旅行券を見てだ。遂にだった。
 ワーグナーは頷いた。彼も決めたのだった。
 こうして彼は男爵と共にミュンヘンに向かう。王がいるその街にだ。
 その彼等が乗る鉄道の中でだ。ワーグナーは男爵に対して話す。
「夢の様です」
「夢ですか」
「そう、あの」
 ここで言うことは。
「エルザの様です」
「貴方の作品のですね」
「はい、ローエングリンの」
 その作品のヒロインの如きだというのである。
「そうなった気持ちです。夢の様です」
「そうですね。実はです」
「実は」
「陛下も同じです」
「バイエルン王もとは」
「あの方もローエングリンを御覧になられました」
 その十六歳の時のことだった。王にとって運命を決めたその時のことがだ。他ならぬワーグナーに対して話されるのだった。
「その時にです」
「王もまたあの歌劇を御覧になられたのですか」
「その通りです」
「光栄です」
「そしてそのうえで」
「どうなされたのですか」
「魅了されました」
 一言だった。
「貴方にです」
「そうだったのですか。それで」
「はい、あの方も時折話されます」
 男爵はだ。向かい合って座り目の前にいるワーグナー、そのローエングリンを生んだ男に対してだ。そのことを語っていくのである。
「エルザになったのだと」
「ローエングリンではなくですか」
「ローエングリンだと仰ることもあります」
「どちらもなのですね」
「そうです。そしてどちらにしてもです」
 男爵は
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