596部分:第三十四話 夜と霧とその十九
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第三十四話 夜と霧とその十九
「あのままなのでしょうか」
「医師、グッデン氏の話では」
「無理ですか」
「やはりどうにもならないそうだ」
大公は唇を噛んだ。口の中で。
「そしてこのままだ」
「このままですか。やはり」
「悪化する危険はあっても助かることはないそうだ」
こう話すのだった。王弟の状況を。
「陛下とは違う」
「しかし財政や国政に関しては」
「あれで何かできる筈もない」
大公は暗い顔で述べた。
「日常生活さえなのだからな」
「左様ですか」
「しかしそのオットーをか」
「あの方しか王になれません」
ホルンシュタインもだ。難しい顔で述べた。
政治であった。王になるのは誰かというのも。そしてこれはバイエルンにとっては避けられない、それと共に厄介な種の政治だった。
その政治についてだ。彼は話すのだった。
「陛下の弟君ですから」
「そして彼があの状況だから」
「ですから殿下がです」
摂政にだというのだ。そういうことだった。
「それで如何でしょうか」
「そうしないと駄目なのか」
「バイエルンの為には」
彼等の国の為だった。全ては。少なくともホルンシュタインはそう信じていた。
そしてその信じるものに基きだ。彼は大公に話すのである。
「是非共です」
「プロイセンのビスマルク卿が陛下をお助けしてくれてもか」
「確かに私はあの方の縁者です」
ホルンシュタインはビスマルクについても述べた。
「そしてプロイセン寄りですが」
「それでもか」
「プロイセン人ではありません」
このことを強く言うのだった。
「バイエルン人です。それでどうして」
「あの方のお力を借りれるかというのだな」
「そこからバイエルンに何を要求してくるかわかりません」
そのことも危惧していたのである。もっともビスマルクはそうした申し出があっても見返りを求めるつもりはなかった。だがホルンシュタインはそのことを知らないのだ。
だからこそだ。こう言うのだった。
「それは絶対に避けなくてはなりません」
「只でさえプロイセンの属国になっているのだからな」
「そうです。ですから」
「我が国だけで終わらせるか」
「はい、そうしましょう」
こう言うのだった。
「何があっても」
「そうか。いざという時は」
大公は俯き溜息と共に言った。
「あの方をか」
「そうならないことを祈っていますが」
「私もだ」
割り切りシビアになっているホルンシュタインよりも大公の方がだった。そう思っていた。やはり王の血縁であり王が幼い頃から見ているからだ。
だからだ。苦渋の顔で述べたのだった。
「あの方の為にも」
「そうですね。しかし時としてです」
「その判断を下すしかないのか」
「大事なのは
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