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提督はBarにいる・外伝
急報、そして出撃
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 その態度は一般的な提督ならば大助かりだと大喜びする所だろう。だが、長年提督を務め上げ、それなりにこの仕事に対しての自負があったこの提督は違う受け取り方をした。否、してしまった。提督の脳裏には、

『ここまでお膳立てしてやったんだ、まさか、倒せないという事はあるまい?』

 と厭らしい嘲笑を浮かべた壬生森の顔がチラついていた。全く、笑い狐とは良く言った物である。

『やってくれるじゃねぇか、狐野郎。いいさ、乗ってやるよ、その策に。元々奴にはやられた分を熨斗付けて返す予定だったんだからな……』

 イライラの許容限界を越えて変なスイッチが入ってしまい、悪い笑顔でクックック……と嗤う提督はさぞ不気味だった事だろう。見てはいけない物を見てしまったような顔をしている大淀など気にも留めず、提督は内線連絡用の受話器を掴むと、臨戦態勢で待機している愛妻に連絡を入れた。



「金剛、俺だ」

『darling?……何かあったネ?』

 提督の声色から事態の進展があった事を察する金剛。その辺りは夫婦としての阿吽の呼吸か、はたまた長年連れ添った提督と筆頭秘書艦の為せる業か。

「あぁ。現時点を以て警戒態勢を解除。『ラフィンフォックス』からの攻撃支援要請が入った……標的は『リバースド・ナイン』!」

『オーライ……待ってた甲斐があったネ』

 提督もまた、金剛の言葉から伝わる感情を汲み取っていた。緊張、不安、そして焦燥。無理もない、と提督は苦笑する。20年以上の歴史を刻むこの鎮守府に於いても史上初のネームレベル討伐作戦への参加。不安に駆られるのは仕方の無い事だ。しかし、そんなマイナスな感情よりも腹の奥底で煮えたぎる思いが伝わってくる。大丈夫だ、と確信する。

「第一・第二艦隊の編成は任せるから先行しろ……俺もおっつけ追い掛ける」

 少し間を置いて、しかしはっきりと提督はそう宣言した。




 受話器の向こうで、金剛の背後がざわめいているのを感じる。この鎮守府のスタイルからすると、『提督が現場に出向く』というのはそれだけの異常事態だからだ。

 金城提督の方針は、『艦娘による現場での判断を優先する』というのが大前提の戦法を採る。提督自身は鎮守府の執務室でドンと構え、大局的な判断のみを通信でやり取りして下す。それ以外は現場任せという端から見れば無責任にも思えるやり方だが、『艦娘は提督の操り人形じゃねぇんだ、何の為に脳味噌は付いていると思ってやがる』とその意見を一蹴した。提督の指示のみに従えば良いというのなら、艦娘ではなくアンドロイドでいいのだ。艦娘は人間同様、感情が有り、思考が出来て、高度な知能がある。ならば現場での判断に任せた方がスピーディだし柔軟な対応が出来る、というのが金城提督の言だ。勿論、現場に出向く為
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