592部分:第三十四話 夜と霧とその十五
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第三十四話 夜と霧とその十五
「最後の手段を」
「それしかないのか」
「大公は摂政になって頂けますか」
「そして殿下が王にか」
「オットー様は今はどうされていますか」
「卿も知っている通りだ」
大公はその顔を暗くさせて述べた。王弟について。
「よくなることはない。それでだ」
「幽閉されたままですか」
「気の毒なことだ」
深い悲しみをもってだ。大公は述べた。
「最早どうにもならない」
「ではやはり大公殿下が」
「私はしたくない」
大公は苦い顔で首を横に振った。
そうしてだ。またホルンシュタインに言うのだった。
「陛下にしてもだ。あのままでいいのではないのか」
「財政が破綻しますが」
「しかしだ。それでもだ」
「確かに陛下は素晴らしい方です」
このことは否定できなかった。誰もが。
それはホルンシュタインも同じだ。彼とて長い間王の傍にいる、だからこそこのことは素直に言えたのだ。
それでだ。こうも言うのだった。
「軍も民もあの方を慕っています」
「そうだ。それではだ」
「しかしです。このままではバイエルンの財政が破綻します」
ホルンシュタインが危惧しているのはこのことだった。
「国家財政の破綻はいいというのですか?」
「いや、それは」
「このままでは我が国の財政は確実に破綻し」
そうしてだった。
「借金取り、若しくは他国の管理下に置かれます」
「それは、あまりにも」
「耐えられませんね」
「最悪の屈辱だ。それはできない」
大公もだ。破綻からくるそのことについては顔を青くさせて述べた。
「我がバイエルンがその様なことになることを受け入れることは」
「それではです」
「退位か」
「はい、そうして頂くしかないかも知れません」
「いや、あの方とお話してはどうか」
大公は戸惑いを見せて述べた。
「何度もだ。そうしてだ」
「しかしそれは可能ですか?」
話が戻っていた。いささか堂々巡りに。
「今あの方とお話することは」
「アルプスに行こう」
大公は尚も言う。
「是非共だ。そうしてだ」
「ですが御会いできません」
「あの方の人間嫌い故にか」
「昼に眠り夜に動かれる」
王の今の生活だった。
「そして人に会われることさえ避けておられます」
「しかしだ。誰かを介して」
「陛下のお傍にいる者達をですか」
「それはできないのか」
「無理でしょう」
ホルンシュタインは諦めていた。既にだ。
「それができればとうの昔にどうにかなっています」
「卿はもう諦めているのか」
「現実を見ているのです」
少なくともそう思っていた。彼は。
「そしてバイエルンのこと、陛下のこともです」
「思っているというのだな」
「私とてバイエルンの人間です
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