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永遠の謎
591部分:第三十四話 夜と霧とその十四
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第三十四話 夜と霧とその十四

 二人は宮廷の一室において向かい合って座りだ。そのうえで話していた。大公はその場においてだ。ホルンシュタインに己の考えを述べていた。
 それは王に関してであり政治についてのものだった。彼は王の叔父、そして王族としてだ。ホルンシュタインに己の考えを出していく。
「あの方は。寂しいのだ」
「寂しい、そしてですね」
「周りの目に耐えられないのだ。そっとしておくべきだ」
「しかしです」 
 ホルンシュタインもだ。難しい顔で大公に返す。
「あの方の築城、そしてお一人での観劇がバイエルンの財政を圧迫しています」
「王室の予算の何年分のだな」
「そうです。このままではバイエルンは」
「わかっている。そのことはだ」
 大公も政治についてはわかっていた。伊達に王族ではない。
 それでだ。彼はホルンシュタインに話した。
「だがそれでもだ」
「それでもだと仰るのですか」
「陛下には何とかお話して」
「あの方は今何処におられますか?」
「このミュンヘンにはいない」
「アルプスにおられますね」
「そこに私が行こう」
 大公にしても切実だった。そうしてだ。
 ホルンシュタインに対してもだ。こう提案するのだった。
「そして卿もだ。卿の言葉なら陛下も」
「私もそうしたいです。しかしです」
「もう陛下は一部の者としか会われないというのだな」
「その通りです。陛下は変わられました」
 ホルンシュタインにはそう思われた。彼の常識の中では。
「今ではああして世捨て人の如く」
「世捨て人か」
「そうなっています。危険です」
「危険だからか」
「このままではバイエルンの財政が破綻します」
 ホルンシュタインはそのことを心から危惧してだった。こう大公に話すのだった。
「ですから。本当にです」
「あの方をか」
「何もお命をというのではないのです」
 ホルンシュタインもそのことは考えていなかった。流石にだ。
「あの方は悪ではありません、決して」
「戦いを好まれる訳でも暴虐を為される訳でもない」
 王は決してそうした人物ではなかった。それはその通りだった。
 だがしかしだった。ホルンシュタインの指摘することは。
「あの方の芸術への愛情がです」
「それがか」
「バイエルンを圧迫しています。芸術はいいです」
 それ自体はだというのだ。しかしだった。
「ですがあまりにも奇妙で度が過ぎています」
「財政についてはだ」
「ビスマルク卿がですね」
「あの方が援助して下さる。あの方は何故か陛下に好意的だからな」
「あのことはどうしてなのか私にもわかりません」
 ホルンシュタインもビスマルクの王への好意については理解できなかった。それが理解できるのは王、そしてビスマルク自身と僅かな者達だ
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