58部分:第四話 遠くから来たその十一
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第四話 遠くから来たその十一
「わかったな」
「はい、わかりました」
「仕方ありませんね」
「それでは」
「ワーグナーが生きていることは確かだ」
それは間違いなかった。それでだった。
彼等はまたワーグナーを探しはじめた。その結果だった。
支援者の夫婦がだ。男爵の身元を打ち明けられてだ。まずは驚いたのだった。
「バイエルンのですか」
「バイエルン王の御命令で」
「そうだ」
その通りだと話す男爵だった。彼等は今密室で話している。
「それでワーグナー氏を探しているのだ」
「そうですか」
「それでワーグナー氏をミュンヘンにですか」
「そちらに」
「そうしたいのだ。それでだが」
ここで彼等にもサファイアを出した。その前に己の身元を証明するものを出すことも忘れなかった。そうして話をするのだった。
「ワーグナー氏は今何処に」
「そのことですが」
「一つ約束して下さい」
夫婦はだ。真剣な面持ちで男爵に言ってきた。
「そのことをです」
「宜しいでしょうか」
「無論だ」
男爵もだ。二人に真剣な顔で返すのだった。
「私とて陛下に誓っている。それならばだ」
「それではです」
「お教えします」
「うむ」
こうしてだった。夫婦はそのワーグナーの居場所を教えたのだった。そこは。
そこを教えてからだ。彼等はこう釘を刺すのを忘れなかった。
「ただ、お約束ですが」
「それはですね」
「それでその約束は何だ」
こう話してだった。二人で話すのだった。
「一体」
「はい、そこへは男爵御一人で向かわれて下さい」
「そのことを御願いします」
約束はこれだった。
「このことはです」
「くれぐれも」
「わかった」
こうしてであった。男爵は遂にワーグナーの居場所を知ったのだった。そして夫婦と交えさせた約束に従ってだ。それで、であった。
二人に教えられたそのワーグナーの居場所に向かった。シュツットガルトのあるホテルの一室にだ。潜伏していたのだった。
一人でそこに向かう。そして扉をノックする。するとだ。
「誰なのか」
「バイエルン王の御命令で来ました」
男爵はまずはこう述べたのだった。
「そうしました」
「バイエルン王!?」
「はい、そうです」
扉の向こうの声の主に対して述べた。
「それでミュンヘンから来ました」
「まさかと。そんな筈が」
「信じて頂けませんか」
「証拠はありますか」
声の主はこう彼に問うてきた。
「その証拠は」
「わかりました」
それを聞いてだった。男爵はだ。
彼の名刺、そして王から直々に貰った直筆の文を出してだ。扉の郵便受けのところに差し入れたのだった。それはすぐに扉の向こうに消えた。
暫くの間沈黙が続いた。しかしそれ
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