579部分:第三十四話 夜と霧とその二
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第三十四話 夜と霧とその二
「そしてノイシュバンシュタインでもあります」
「陛下が築かれた城達ですか」
「その城達こそが」
「私の故郷です」
まさにそうだと言うのだった。そうしてだ。
シャンパンを飲んだ。王の愛する酒の一つだ。
「だからここにいるのです」
「そしてその故郷にですね」
「エリザベート様をお招きできることが」
「嬉しいものです」
また言う王だった。
「それも実に。では」
「はい、その明日に備えてです」
「用意させてもらいます」
こうしてだった。その明日のオーストリア皇后の来訪の用意がされていった。その中でだ。一人の少女、城に勤める者の娘が好奇心から王の部屋に入った。
そこは見事なベッドにだ。美しい絵画があった。そして装飾で飾られている。
その部屋に入り恍惚としているとだ。後ろからだった。
少女に王がだ。こう問うたのだった。
「どうされたのですか?」
「陛下・・・・・・」
「ここは王の部屋です」
怒らない声でだ。王は少女に述べた。
「その部屋に王の赦しなく入ってはいけませんね」
「はい・・・・・・」
「そのことは知っていましたね」
「知っていました」
少女は恐る恐る王に素直に答えた。
「ですが」
「どうして入られたのでしょうか」
王はあくまで穏やかだった。怒るものはない。
「そのことを話すのです」
「一度。陛下の部屋がどういったものか」
「見たくなったのですか」
「そうです」
少女は素直に述べていく。子供らしい素直さで。
「申し訳ありません。それで」
「わかりました。それではです」
王はここまで聞いて少女に告げた。
「もうここには二度と入らないことです」
「えっ、それだけなのですか」
「人には好奇心があります」
そのことがわかっているからだった。王は今こう言ったのである。
「ですから時としてこうしたことをしてしまいます」
「ですが私は」
「王である私がいいとしています」
処罰を覚悟していた娘にもだ。王は優しい。
「それではいいのです」
「では私は」
「今すぐこの部屋を出るのです」
その声はここでも優しい。
「わかりましたね」
「はい、わかりました」
こうしてだった。少女は王に深々と頭を下げそのうえで部屋から駆け去った。このことが知られる様になったのは少女が成長して王について話した時だった。
皇后はヘーレンキムゼーに馬車を進めていた。その中でだ。
皇后は自身の侍女達にだ。馬車の中でこう話していた。
「バイエルン王は近頃人前に姿を現されないのですね」
「はい、その様です」
「そして昼に眠られ夜に起きられます」
「こうした山奥の城に篭もられです」
「築城とお一人の観劇ばかりされています」
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