578部分:第三十四話 夜と霧とその一
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第三十四話 夜と霧とその一
第三十四話 夜と霧と
王はこの時ヘーレンキムゼーにいた。その一室の中でだ。
豪奢な、やはりロココやワーグナーを思わせる絵画のあるその部屋においてだ。彼はホルニヒを傍に控えさせていた。そのうえでだ。
ワインを手にだ。朗読するカインツに述べていた。
「見事です」
「これでいいのですね」
「はい、この前とは全く別です」
その前の話がここで出た。
「あの時はどうかと思ったのですが」
「実はです」
カインツは王にだ。素直に述べた。
「ある方からアドバイスを受けまして」
「それでその朗読になったのですか」
「はい」
答えてからだ。そのうえでだ。王に話す彼だった。
「そちらにおられるホルニヒ殿に」
「この者にですか」
「よい朗読の仕方を教えて頂きました」
こう述べるのだった。
「それで朗読を変えてみました」
「そうだったのですか」
ソファーに座り美酒を飲みつつだ。王は納得した顔になった。
そのうえでだ。こうホルニヒ、王が飲んでいるワインを手にしている彼を見たのだった。
そうしてだ。こうホルニヒにも述べた。
「有り難う。そなたが今一人の素晴らしい俳優を生み出したのだ」
「勿体なきお言葉」
「彼は素晴らしい資質の持ち主だ」
それがわかっているというのだ。
「その彼の資質を開花させた」
「いえ、私はです」
だがホルニヒは王にだ。こう言うのだった。
「ただ彼に助言しただけで」
「それだけだというのか」
「全ては彼の力です」100
カインツを見てだ。そのうえでの言葉だった。
「彼はその素質を発揮しただけです」
「そうか。ではだ」
「それではですね」
「彼の朗読をもっと聞きたい」
王は微笑み述べた。そのうえでカインツに顔を戻してだ。
そのうえでだ。こう言ったのである。
「お願いします」
「ではまた」
「そうして下さい」
こうしてだった。この日はカインツの朗読を楽しんだ王だった。
そしてだ。遂にその日が来たのだった。
深夜目覚めた王にだ。従者達が告げる。王は丁度朝食の時だった。
朝食とはいえ果物や肉が豊富にある豪奢なそれを食べる王にだ。彼等は告げたのである。
「陛下、皇后様がです」
「明日この城に来られます」
「明日のお昼にとのことです」
「そうですか」
そのことを聞いてだ。王はまずは微笑んだ。
そうしてだ。こう彼等に述べるのだった。
「ではその時はです」
「お昼にですね」
「起きられますか」
「そうします。昼といえど」
どうかというのだ。王が避けるその昼も。
「シシィがいれば違います」
「それだけ華やかになるということでしょうか」
「はい」
静
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