暁 〜小説投稿サイト〜
永遠の謎
574部分:第三十三話 星はあらたにその十九
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

第三十三話 星はあらたにその十九

「だからこそ。あの城にも入られるのだな」
「城?ノイシュヴァンシュタインでしょうか」
「いや、あの城ではない」 
 王にだけ見えることだった。そのことは。
「あの世界にある城なのだ」
「あの世界?」
「私は最後にあの城に入るのだ」
 半ば恍惚としてだ。王は話すのだった。
「最後にはだ。だが」
「だが?」
「今はこの世界の城を築いていこう」
「ノイシュヴァンシュタインですね」
「当然ヘーレンキムゼーやそうした城もだ」
 今王が築いているその城達だった。その城達を見ながらだ。
 王はだ。静かに話すのだった。
「そうしていこう。何はともあれ満足している」
「指輪が終わったことを」
「そうだ。そのことは実に素晴らしい」
 満足した言葉を続けていく。
「バイロイトは今その歴史をはじめたのだ」
「あの、ですが陛下は」
「確かにミュンヘンに築いて欲しかった」
 その望みは話すのだった。王にとっては切実な願いだった。だがそれは適えられなかった。そのことを残念に思う気持ちはまだ強くあった。
 しかしそれでもだった。王はワーグナーの芸術自体について語るのだった。
「この町は聖地になる」
「芸術のですね」
「モーツァルトを産んだザルツブルグ」
 王はモーツァルトも愛している。ロココを象徴するその偉大な作曲家も。
「あの町に匹敵するだけの聖地になる」
「ではワーグナー氏もまた」
「ゲルマン民族は何と幸福なのか」
 ひいてはだ。民族の話にもなった。
「モーツァルトとワーグナーの二人の聖地をだ。神に与えられ、そして」
「さらにですか」
「他にも実に多くの素晴らしい音楽家を与えられた」
 そうだというのだ。二人の偉大な音楽家達だけでなくだ。
「バッハ然り、ベートーベン然りだ」
「彼等もまたですね」
「シューベルトもいい。全てはドイツの宝だ」
「この国のですか」
「この民族に神は数多くの素晴らしい音楽を与えてくれた」
 王の言葉は今は現実にはなかった。神の神秘的な世界を見ていた。
 そうしてだ。王はその夢幻の音楽を語っていくのだった。
「そしてその中の一つとしてだ」
「このバイロイトがですね」
「聖地になる。偉大な音楽のだ」
「バイロイトはこれまで何もない只の田舎町でしたが」
「しかしそれでもですね」
「そうだ。今その歴史がはじまったのだ」
 その現実を話す。しかしだった。
 ホルニヒはここでは暗い顔になってだ。王に話した。
「しかしワーグナー氏はどうやら」
「聞いている。財政だな」
「かなりの赤字になったと御心を沈まされているそうです」
「大したことではない」
 王にとってはだ。まさにそうだった。
「はじまりで赤字になったといってもだ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ