570部分:第三十三話 星はあらたにその十五
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第三十三話 星はあらたにその十五
「女性なのだ」
「ローエングリンだと思われていますが」
「ヘルデンテノール達は全て同じ人格だからそうでもある」
「ではあの方はやはり」
「パルジファルなのだ」
ワーグナーはそうした意味からもだ。王をこう呼ぶのだった。
「まさにな」
「女性的なものも内包された」
「パルジファルはクンドリーとの接吻により目覚めた」
「そしてあの方は」
「ローエングリンとの出会いによってだ」
目覚めたというのだ。王にとっての接吻はそれだったというのだ。
「そうさせたのは私になるのだな。いや」
「いや?」
「あの騎士は。私が描かずとも」
絵画的な話にもなっていた。ワーグナーは己の話から想像してだ。こう話したのである。
「あの騎士は自然と出て来て」
「そうしてなのですね」
「あの方を目覚めさせたのだろう」
「ではあなたがあの方に果たされたことは」
「橋渡しに過ぎないのかも知れない」
王と騎士の出会いの、それのだというのだ。
「若しかしたらだが」
「橋渡し。それだけですか」
「そうだったのかも知れない。だが」
それでもだというのだ。ワーグナーは深く思索しつつコジマに話していく。
「あの方にとって私の芸術は絶対のものになっている」
「はい、それはまさに」
「あの方は今それを描き出されている」
それが城達だった。王がアルプスに築いていっているそれだった。
「あれは費用から色々と言われているが」
「バイエルンにおいて深刻な問題になっていますね」
「だがそれは誤りだ」
予算から王を批判する、それはだというのだ。
「あの方のこの世での使命でもありあの城達は」
「ただ。陛下の道楽ではないのですね
「確かにあの方の全てが込められている」
そこには道楽もあるのは確かだった。
だがそれでもだ。それだけではない、ワーグナーはわかっていた。
「しかしそれ以上にだ」
「あの方は多くのものをですね」
「あの城に描かれている。必ずドイツの、いや」
ワーグナーは観た。城達にあるものを。
「人類にとって最高の財産の一つになる」
「ですがそのことは」
「まだ誰にもわからない」
殆ど誰もだった。僅かな王を理解できる者達以外の。
「あの方にとってはそれが悲劇なのだ」
「私も。あの方は」
コジマもだ。顔を曇らせて述べる。
「どうしても理解できないことが多いです」
「そうだろう。私があの方を理解できること」
ワーグナーも彼にしては珍しく顔を俯けさせて話す。
「それは最高の幸せだ」
「それ自体がですか」
「神が私に与えられた幸せだ」
「そうですか」
「そうだ。そしてその方に」
どうするかとも話していく。
「贈りものをさせてもらう」
「指輪の
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