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戦国異伝供書
第二十三話 東国入りその十

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「だからじゃ」
「ここは、ですな」
「東北については守りを固める」
「佐竹殿にそれを任せ」
「伊達家を抑えますな」
「暫くな、九州も気になるが」
 九州は大友、竜造寺、そして島津の三家で争っている。今のところ大友家が第一の勢力となってはいる。
「特に島津家がな」
「あの家ですか」
「四兄弟が治める」
「あの家が気になりますか」
「おそらく北に上る」
 九州の端である薩摩島津家の本拠地からというのだ。
「そうしてくる、島津の兵は強く」
 そしてというのだ。
「鉄砲も多い」
「そういえば」
 大津が島津家の鉄砲について目を光らせて述べた。
「島津家の領地である種子島にでした」
「最初に鉄砲が伝わったな」
「そして最初に鉄砲を造りはじめ」
「多くの鉄砲を造って持っておるな」
「はい」
 その通りだとだ、大津は信長に答えた。
「当家を除いてはです」
「あの家が最も多くの鉄砲を持っておるな」
「そうなります」
「そうじゃな、だからな」
「あの家がですか」
「最も強い」
 こう言ったのだった、信長も。
「九州の中ではな」
「では」
「今は大友家が強いが」 
 織田家とも縁が深いこの家がというのだ、だが信長は自分と親しいこの家についてこう言ったのだった。
「宗麟殿は気になる」
「あの方ですか」
「耶蘇教に溺れておる」
「そうしてですか」
「そうじゃ、神仏を否定してじゃ」
 そのうえでというのだ。
「神社仏閣を破壊して回っておる、それではじゃ」
「人心が離れていきますな」
「自然と」
「そうなっていきますな」
「そうなってはどうにもならぬ」
 大名家としてというのだ、信長は周りの者達に話した。
「最早な、それでじゃ」
「若し竜造寺家や島津家と戦になれば」
「人の心が離れていれば」
「幾ら兵が多くとも」
「どうにもならぬ、そして島津家は強い」
 このことも問題だというのだ。
「だからな」
「ここはですな」
「九州のことも見ておきますか」
「戦の後は」
「そうする、数年は大きく動かぬであろうが」
 それでもというのだ。
「やがてはな」
「九州は三つの家が衝突し」
「大きく動きますか」
「そしてその中でもですか」
「島津家が大きいですか」
「九州が一つの家のものになれば厄介じゃ」
 それだけ大きな勢力になるからだ、信長はそれは警戒していた。
「若しそうなりそうならじゃ」
「その時はですな」
「急いで軍を繰り出し」
「そうしてですな」
「そのうえで」
「九州も手に入れる」
 これが信長の考えだった。
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