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戦国異伝供書
第二十三話 東国入りその七

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「ない様な」
「そうした状況じゃな」
「その地にですか」
「そうじゃ、大きな城を築いてな」
 そのうえでというのだ。
「街もな」
「大きいものにしますか」
「そう考えておる」
「織田家の東国統治の要ですか」
「室町幕府は鎌倉公方を置いたが」
 しかしというのだ。
「江戸城代を置いてな」
「そうしてですか」
「東国統治の要とする」
「左様ですか」
「関東の戦が終わればな」
「では殿」
 今度は矢野が信長に問うた。
「小田原の城は」
「残るがな」
「それでもですか」
「小さくする」
 巨大さで知られるこの城はというのだ。
「惣構えでなくしてな」
「そうしてですか」
「小さな城にしてじゃ」
「そのうえで残されますか」
「街を囲んでいる壁や堀、石垣はなくす」
 そういったものはというのだ。
「そうしてじゃ」
「城を小さくして」
「残す」
「そうしてはあの城も」
「守りが弱くなるのう」
「あの城が強いのは大きいからです」
 惣構えのそうした城であるからこそとだ、矢野も述べた。
「それでは」
「小田原を小さくしてな」
「関東の政の拠点は江戸城じゃ」
「これからは」
「巨大な城にしてじゃ」
 そうしてというのだ。
「天守もよいのを造るぞ」
「その天守ですが」 
 今度は大津が言ってきた。
「これから築かれる大坂のものと」
「同じだけな」
「大きく見事なものにですか」
「するつもりじゃ」
「そこまでのものですか」
「うむ、姫路の城の天守もそうするし」
 それにと言うのだった。
「名古屋の方もな」
「清州を大きくしてですな」
「よい城を築くが」
「その天守もですな」
「よいものにする、天守がよいと」
 それでというのだ。
「城は遠くを見られるし見栄えもな」
「よいですな」
「だから築かせる」
「江戸においても」
「江戸城は東国一の城いや」
 ここで信長はこう言った。
「天下屈指のじゃ」
「そこまでの城にされますか」
「そう考えておる」
「そして関東だけでなく東北も」
 長谷川も信長に言う。
「治められますか」
「うむ、しかし東北にも抑えが必要じゃ」
 信長は既にこの地のことも考えていた。
「それで考えておるのじゃ」
「あの地にも城を築かれますか」
「抑えにな。その城は」
 何処に置くか、信長は長谷川に答えた。
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