569部分:第三十三話 星はあらたにその十四
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第三十三話 星はあらたにその十四
「そうしたことにまで目覚めたのです」
「そうだったのですか」
「彼はそれにより聖杯城も騎士達も王もです」
「そこにいるあらゆる聖なるものをですね」
「救える様になったのです」
こう言うのだった。そしてだ。
王はだ。こうも話した。
「目覚めですか」
「目覚め?」
「目覚めとは」
目覚めという言葉にはだ。ワーグナーに詳しい侍従だけでなく他の侍従達も応える。そうしてそのうえで話をするのだった。
「クンドリーの接吻ですね」
「そのことですね」
「いえ、私の目覚めは」
何時しかだ。王自身の話になっていた。
「あの時。ローエングリンに出会ったことでしょうか」
「あの、ローエングリンですか」
「ここで」
「はい、あの騎士です」
まさにそうだとだ。王は彼等に話す。
「彼に出会ってからです」
「お話がよくわからなくなりましたが」
「ここでローエングリンなのですか」
「パルジファルではなく」
「彼等は同じですから」
侍従達にはわからない。しかし王の中では全てわかっていることだった。
そしてそのうえでだ。彼は言うのだった。
「私は。何時かは」
「今からバイロイトです」
「そちらに赴かれます」
「いえ、聖杯城に」
ここで言うのはこのことだった。
「そこに行くのでしょう」
「左様ですか」
「そうなのですか」
侍従達は王の話がわからなくなった。しかし王の中では全てがはっきりとわかっていることだった。それがわかる者は王以外では僅かではあるが。
その僅かな理解者の一人であり他ならぬ王の愛する芸術の創造者であるワーグナーは当然ながらバイロイトにいる。その彼はだ。
己の邸宅であるヴァンフリートでだ。自身の足下にいる犬をあやしながらだ。コジマに話すのだった。
「あの方が来られるな」
「そうですね。間も無く」
「バイロイトに来られる」
ワーグナーは微笑んで妻に話す。
「パルジファルがな」
「聖杯城の王となられる方がですね」
「来られるな」
こう言うのだった。
「私はあの方が来られるのを待っていた」
「そして貴方の歌劇を。世界を観られることを」
「待っていた。確かにワルキューレのことはあった」
そのことはまだ不快に思っていた。しかしだった。
「ですがそれでもだ」
「あの方はなのですね」
「敬愛せずにいられない方だ」
敬意と愛情を込めてだ。彼は話した。
「心からな。だが」
「だが?」
「あの方はローエングリンによって目覚められた」
ここでこう言うのだった。
「パルジファルになられたのだ」
「その時にだったのですか」
「あの方の御心は女性だ」
そのだ。救済するものだというのだ。
「女性的なものはあの方にと
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