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魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
第一部
番外編 おかしな第一魔法刑務所
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◆ 黒華琴葉の場合 ◆

 ふふふ。何時もみたいに、レンが寝ている。
 幼い子供みたいに、可愛い寝顔をして、寝ている。

 こんな表情、私以外に見せないでよ。
 私だけが見ていいの。

 誰もあげない。
 誰にも渡したくない。

 君が居るから生きてられる。

 だけど、レンは嫌がるんだものね。


「えへへ……」


 腕から血が滴る。
 手には血が滴る包丁。

 血がレンの顔に落ちる。


「一生わたしだけのモノ。誰にも渡さない。だれにもあげない。レンは私を愛してくれるよね?」


 医務室の奥。
 何時もは純白に包まれた部屋だが、今日は真っ赤に染まっている。

 翁もいなくて、他の六人の被検体もいない。


 この真っ赤な部屋で、一緒に暮らそう?

 愛してるよ、レン。

 絶対に離さないから。



◆ 闇月響の場合 ◆

 神白さんに許可を貰い、仁と共に一舎へ向かう。

 目指すはあの人の元。

 一舎の看守室の扉をノックして、静かに中に入る。

 やっぱり居る。


「ご主人様。お早う御座います」


 ご主人様―――琴葉様が目を見開いて此方を見ている。
 今日も、美しい。


「……お早う。あ、丁度良いわ。ねぇ、響、仁」
「何でしょう、ご主人様」

 光のない目が、昔そっくりで、とても愛おしい。

「ちょっと、この傷を治療してくれるかしら」

 ご主人様が袖を捲ると、そこは血塗れで、何十本も深い傷が走っている。
 魔法で隠していたらしく、魔法を切ると、顔にも傷があって、血が流れている。


「「畏まりました、ご主人様」」


 魔法を使って治療するのではなく、昔と同じ様に包帯を巻いておく。


 壊れかけのご主人様を、丁寧に丁寧に直していく。

 それが俺達の役目だ。


「何時までも、俺達はご主人様に尽くします」



◆ グレースの場合 ◆

 ハクと一緒に房に居るよ。
 シンは昨日からおかしいから、医務室に居る。

904「暇だ……」
89「え?」
904「暇なんだよー!!」
89「それ、ボクに頼ることー?」
904「……琴葉んトコ行くしかない!!」

 房を抜け出し、看守室に向かう。
 扉の前に誰も居なそうなので、そのまま扉を蹴破って中に入る。

 中にはメイド兄弟と、琴葉が居た。

904「琴葉ちゃぁぁああん!! ……って、メイド二人は如何為ているの? てか、如何為て琴葉ちゃんはミイラみたいになってんの!?」
琴葉「黙れ(レンに会いたいレンに会いたいレンに会いたいレンに会いたいレンに会いたいレンに会いたいレンに会いたいレンに会いたい
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