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ユア・ブラッド・マイン -フロックスの贈り物-
フロックスの贈り物
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インカムから相変わらず平坦な女の声が帰ってくる。
 じゃあどこに、と問い直そうとした直後だった。

『ただし、()()()()()()()

 女の声から、ドロッとした悪意が湧き上がった。
 右腕に何か熱い感覚が走り、ぼとりと重たく水っぽいものが足下に落ちる音がする。
 そちらに視線を向ける。
 腕が、コンクリートの上に出来た赤黒い水たまりに沈んでいた。完全防水の端末は相変わらずマップを小さく表示して
 待て。
 その端末は、どこについていた?
 眼を動かす。水たまりの真上。本来そこには白人特有の、アレクセイの生っ白い腕があるはずで。
「………………は?」
 理解を拒んだ脳が、ただ疑問の声を出していた。
 どうして、オレの腕はなくなっている?
 認識が追いついた瞬間、津波のように激痛が襲ってきた。
「――ぐ、がァァァアアアアアアッ!? 腕、オレのッ、うでぇぇえええええええ!?」
『おや? 思ったより元気なようだな』
 傷口を押さえ、絶叫しながらながらもんどりを打つアレクセイの耳に、女の忍び笑いが届いた。
「なん、なんでェ!」
『ああ、そうだったな。まだ私の名前を教えていなかった』
 噛みつくように問うと、女は思い出したように言う。
『申し遅れた。私の名前は()()()()。以後お見知りおきを、アリョーシャ?』
「…………………………は、」
 思わず、短い笑いが漏れた。
 バレていたのだ。
 最初から、こちらの計画は全て筒抜けだったのだ。
 おそらく、先に入っている潜入員はとっくに捕まって捕虜になっているか、あるいは殺されているかも知れない。ラバルナ帝国の統一によって国際法などもはや壊滅して久しい。拷問だってされているかも知れないのだ。
 倉庫隅から、スゥっと人影が現われる。軽鎧で腕と胸を覆った軍服姿の少年だった。年の頃は十八くらいか。その手には、真っ赤に濡れた一振りの刀があった。
 夜空の藍を凝縮したようなその刀身が、すらりと閃く。あれが自分の「死」だと、アレクセイは直感で知った。
「……いやだ」
『そうか』
「嫌だ! 死にたくない!! 何でも話す、知ってることは何でも話すから!!」
『例えば?』
「名前! オレが呼び込む手筈の製鉄師の名前!」
『それがどうした』
「手段は!?」
『もう聞いた』
「内政状況!!」
『知ってるとも、お前よりもな』
「じゃあ――」
『もういいよ』
 尚も頭の中を探るアレクセイに、投げかけられたのは短く、冷たい処刑宣告だった。
『だいたい、鉄砲玉のお前が知ってる情報なぞ、頭を押さえた時点でこっちは既に得ている。今回のはただのネズミ駆除さ。そんなことにも気づけない時点で、お前は我々
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