フロックスの贈り物
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代遅れだ。そのパラダイムシフトを担ったものこそが、鉄脈術である。
ラバルナ帝国の下で全世界に広がったそれは、製鉄師と魔女なる二種の特異体質者が組むことにより発動せしめられるという。たった二人一組の異能者が、時として戦略兵器に相当する破壊を生み出すのだ。一山幾らの雑兵など戦場にはもはや不要というのは疑う余地はない。
表向きは。
「このご時世、オレたち普通人が一発当てるにゃ、こういう地味でせせこましい工作活動しかねぇんだ。無駄話でもしねぇとやってられんよ、全く」
勘違いされがちだが、戦争とは必ずしも弾丸と弾丸の押収のみを指す言葉ではない。例えばハッカーを使ったサイバー戦争。あるいは本命の製鉄師を通すために密入国の手引きをしたり、潜入した先でインフラを破壊したり、作戦内容を傍受することだって立派な「戦争活動」だ。
そして、ことそれらの作業に関して言えば、行なうのが製鉄師である必要性はない。
つまりは、アレクセイもそんな中の一人だった。
「そうは言っても、この国は魔鉄後進国だろ? こんなに警戒する必要あるのか?」
『侮るな。量に負けても質で上回るのがこの国の昔からの特徴だ。セカンドオリジナルを三人も抱えるのは世界を見渡してもそうそうない』
アレクセイの言葉に、通信機の向こうからどこかむっとしたような言葉が返ってきた。
セカンドオリジナルとは、ラバルナ帝国が未だ健在だった頃、建国二十五周年を記念して各地から帝都ハットゥシャに招集された、謂わば鉄脈術に関する天才たちだ。彼らこそが、帝国崩壊後の鉄脈術とそれに付随する新技術――即ち魔鉄文明を広めた立役者。その影響力は、今なお絶大なものを誇った。
「相浦群青、無明異七紫、そして黒崎暗音……か」
いずれも、鉄脈術に直接触れてはいないアレクセイですら知っている名前。まさしく生きた伝説。それらが自分に襲いかかってくるなんて、想像するだけで背筋が凍るようだった。
「ぞっとしねぇな。それよりももうすぐ着くぞ」
マップの光点に、現在の自分の座標が重なる。
顔を上げると、そこは倉庫だった。積荷を一時的に保管するあれだ。中に拠点を用意してると言うことだろうか。
『鍵は開けてある。入れ』
「……もう少し愛想良くしてくれても良いんじゃねぇの?」
これじゃほとんど囚人だ。悪態を吐きたくなるところをグッと堪えて、言われるとおりに中に入る。
まだ積入れをする前のようで、中はがらんとしていた。
さっと目を走らせてみるが、特に地下へ繋がる梯子などが隠されていそうな場所もない。
「おいおい、どういうことだ? 何もねぇぞ。本当にここであってるのか?」
『案ずるな。そこが終点だ』
抗議を入れると、
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