第T話 赤は戸惑い紅葉は笑う
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ありがとう。助けてくれて」
「こちらこそ感謝しているよ。あの量、一人じゃ食べきれないからさ。いくらでもおかわりしていいから」
「…うん」
次にモミジさんが尋ねてきた。
「レッドさんって、トレーナー?」
「…うん」
「へえ。カントーはもう全部回った感じかな?」
「……回った」
「そっか。ジムも制覇した?」
「…した。……モミジさんも、トレーナー?」
「うん。僕も君と同じ」
「…ジム制覇したってこと?」
「そう」
モミジさんは言葉を続けた。
「キョウ、だったかな。彼のところのジムは大変だった。見えない壁が、特に」
「!…分かる。あと、毒でじわじわ責められるの、きつかった」
「分かる分かる。ちなみに、僕が手こずったのはドガースとかマタドガスかな。特性がふゆうだからね。地面タイプが効かなくて焦ったなぁ」
「…同じだ」
「あ、そう?」
同じだね、とモミジさんは笑顔を浮かべながら言った。その笑顔があまりにも無邪気で、嬉しそうだったため僕もつられて笑った。
するとモミジさんは少し驚いたように目を見開き、僕をジッと見つめた。
「…モミジさん?」
「あ、ううん。なんでもないよ」
だがすぐ視線を逸らした。何事もなかったかのようにシチューを食べている。
__なんだったんだろう。もしかして……無愛想だと、思われていたのかな?
そんなことを考えていると、モミジさんは聞いた。
「ねえ、レッドさん。ちょっと旅の話でもしない?」
「…いいよ」
「やった」
話下手だからちゃんと話せるか不安だけど。内心そんなことを思った。
▽
「…ご馳走様」
「お粗末様」
思いのほか話が盛り上がった。モミジさんの旅の話はとにかく興味惹かれるものばかりだったし、僕の話もちゃんと聞いてくれた。
モミジさんは話上手、聞き上手だった。僕が話下手だということにすぐ気付き、僕が話しやすいように促してくれたり、質問してくれた。 おかげで言いたいことが沢山言えた。
だけどまだ話足りないな。 一緒に皿を洗いながら思った。
「それにしても驚いたよ。レッドさん、チャンピオンだったんだね」
「……まあ、一応」
「僕、テレビ見ないから全然知らなかった。新聞も最近読んでないんだ」
「……モミジさん以外に、人っていないの?」
「いないよ。友人ぐらいしかこの家に来ないし」
「…いつも何してるの?」
「散歩とか、庭の花の世話とか、ポケモンの世話とか。それぐらいかな」
「………そっか」
なら、また来てもいいか。
そう言おうとしたけど、飲み込んだ。
いくらなんでもそれは迷惑だろう。もっと話たいと思っても、僕は看病され食事もしてもらった身だ。
___馴れ馴れしい、図々しい、
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