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紅葉のほほえみ
第T話 赤は戸惑い紅葉は笑う
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どいるだろうか。
慌てて立ち上がり、その人に近づくと不思議そうな顔でこちらを見た。

「大丈夫だよ。君はゆっくり休みなって」
「……僕が、悪いから。お詫びさせて」

自分に何か出来ることはないか。キョロキョロ辺りを見渡した。 
だが、結局何をしたらいいか分からず手が動かなかった。
困惑している僕の隣で、クスクスと笑う声が聞こえた。

「お詫び、してくれるんだよね?」
「……うん、僕が出来ることなら」
「それなら、夕飯食べて行ってくれないかな?」
「夕飯…?」
「ホワイトシチュー。友人の分も作っておいたんだけど、来れなくなったんだ」

だからあんなにあるんだ、と指した方を見ると、大きな鍋に蓋がされていた。中身は言った通りホワイトシチューなのだろう。
口調からして既に完成しているようだ。美味しそうな匂いが蓋をしていても漏れており、鼻をくすぐる。

ちょっと、涎が垂れそうだ。

「シチュー、嫌いかな?」
「……嫌いじゃない。……食べていく」
「そう?ありがとう」

正直これでお詫びになるのならお安い御用だ。そんな思いで快諾した。

「じゃあ温め直すから、少し待ってね」

そう言ってコンロに火をつけた。





「そういえば、自己紹介がまだだったね」

皿にご飯をよそい、温め直したシチューをかける。
二人分をテーブルに置き、スプーンを用意しながらその人は自己紹介をした。

「僕はモミジ。この家でポケモン達と暮らしている、ただの常人さ。君は?」
「……レッド」
「ん、宜しくね。僕は君のこと、レッドさんと呼ばせてもらうよ」
「……じゃあ僕は、モミジさん、でいいかな」
「勿論」

スプーンと、水が入ったコップを皿の隣に置く。全く無駄のない動きだった。
向かい合って座ると、モミジさんが手を合わせた。

「さて、では」

僕もそれに倣い、手を合わせた。

「いただきます」
「…いただきます」

スプーンを手に取り、一口。

食べた瞬間、熱いと感じつつも丁度いい甘さと薄さで顔が綻ぶ。好みの味だ。 
素直な気持ちを、一言。

「…美味しい」
「ありがとう」

モミジさんは優しく微笑むと、たおやかな仕草でシチューを食べ始める。

互いにシチューを食べながら、僕はモミジさんに尋ねた。

「……モミジさんが、僕を運んだの?」
「いいや。見つけたのは僕だけど、運んだのは僕のポケモンさ」
「ポケモン?」
「そう。ウインディ」

外で遊んでいるよ、と言われた。シチューを食べ終わったら、お礼を言わなければ。
__いや、その前に。目の前にいる人物にすらお礼を言っていない。なんて無礼な奴なんだろう。

僕は小さく頭を下げた。

「…本当に、
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