第T話 赤は戸惑い紅葉は笑う
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誰かに頭を撫でられている。壊れ物を扱うかのように優しく、丁寧に。
そう感じたと同時に目が覚めた。
目に入った光景は僕の家でも、幼馴染の家でも、研究所でも、ポケモンセンターでもない見慣れない天井。
ここはどこだ。そして何故僕は眠っていたんだ。
寝起きなため頭がぼんやりして働かない。
それらの疑問の答えが出ないまま、声をかけられた。
「ああ。起きたかい?」
首だけを動かし、声の主を見た。そこにいたのは一人の女性だった。
__いや。女性というより、少女か?黒色の短い髪に、橙色の瞳、そして色白の肌。声や顔には少し幼さが残っていた。だから、少女の方が合っているのか?
でも、着ているものは青色の朝顔の絵柄が入った黒色の着物で帯は白色。偏見ではあるが大人が着るようなそれを違和感なく着こなしている。だからあながち、女性というのも間違っていない?
そんなことを考えていて何も答えずにいると、その人は僕のことを心配そうに見つめた。
「大丈夫?どこか悪い?」
「……」
首を横に振った。悪くないという意思表示だ。
「そう?それならいいんだけど」
「……ここは、何処?」
「トキワシティの僕の家。君、トキワの森で倒れていたんだよ?」
「……倒れていた?僕が?」
「うん」
そう言われ、自分の行動を思い出してみた。
僕はトキワの森で何かをしていた。何かを捕まえようとしていた。
ええと。確か、確か_____
あ。
「……ピジョン、探してたんだ」
「ピジョン?」
「……捕まえようと、思って。でも、全然見つからなくて」
「それで?」
「……三日三晩探した」
「ああ、なるほどね」
その人は何かに納得したかのように頷いた。そして、可笑しそうに少し笑った。
「倒れた原因は寝不足と、捕まえられないストレスかな」
「……」
その言葉に、僕も納得した。まったく情けないことだが。
いつまでも寝ているわけにはいかず、ゆっくり体を起こした。
今気付いたことだが、どうやらソファーに寝かせてくれたようだ。さらに白色の薄い毛布がかけられていた。横を見ると帽子と荷物、モンスターボールがテーブルの上に置かれていた。
自分が体調管理を怠ったことで起きたことなのに、何から何までしてもらっていた。大変申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
よいしょ、とその人は立ち上がりキッチンへと向かった。だが、右足の歩き方がぎこちない。引きずっているようだった。
思わず声をかけた。
「……足、どうしたの?」
こちらを振り向く事なく答えた。
「ああ、気にしなくていいよ。生まれつき悪いんだ」
「……」
本人は当たり前のように言っているが、そう言われて気にしない者な
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