第三章
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「鞄の中には傘があるし」
「安全ね」
「それじゃあ」
「ティッシュもあるから」
これもというのだ。
「急におトイレ行きたくなって紙があってもね」
「大丈夫なのね」
「そっちのことも」
「そうよ、絶対にね」
こう言うのだった、そうしてすみれはこの日は学校では大人しく過ごした。危うく体操服を忘れるところだった体育の授業でもだ。
準備体操をいつもよりも真剣にして慎重にした、そしてだった。
美術部の部活でデッサンを終えてから地下鉄に乗って百貨店に向かおうとしたが。
途中通り雨があったが傘をさしてこの難も逃れた、地下鉄の駅に入ると急にお腹の調子が悪くなってトイレに入ったが。
残念ながら紙がなかった、しかしティッシュがあったのでこちらも大丈夫だった。
地下鉄に入るとこの日は随分とマナーの悪い客がいた、丸坊主で頬と顎に白い髭を生やしガングロにした顔の長い大男だ。
その彼がだ、すみれを見て絡んできたのだ。
「おう姉ちゃん可愛いな」
「あの、貴方誰ですか?」
「わしか、わしは元プロ野球選手の喜代原和弘や」
大男は自分から名乗った、タンクトップに半ズボンで脚にはタトゥーがある。身体は変に太った感じだ。
「知っとるやろ」
「元虚塵の」
「そや、姉ちゃん可愛いからのう」
下品な笑みでだ、喜代原はすみれの前に立って顔を近寄せて言うのだった。
「わしと付き合わんか」
「あの、私そうしたことは」
「ええやろ、これからホテルに行って楽しませたるわ」
喜代原の笑みは余計に下品なものになった。
「そやから今からな」
「あの、あまり言われますと」
すみれは鞄から警棒とスタンガンを出した、そのうえで喜代原に応えた。
「私も」
「ひっ!?何やそれ」
「自分の身はっていいますし」
「何やワレ、武器持ってるんか」
「貴方みたいな人には素手では勝てないですよね」
一介の女子高生である自分ではというのだ。
「ですから」
「いや、待て。わし武器はあかんのや」
先程までの威勢は何処かに行ってだ、喜代原は完全にびびった顔ですみれに言った。
「止めろ、わかったからな」
「わかったからですか」
「そんなんで殴るな、ええな」
「貴方が何もしないなら私も何もしません」
「わかった、ほな帰るわ」
喜代原はそそくさと逃げ去った、この数日後彼はマンションで覚醒剤を使用していることが判明し逮捕された。
何はともあれすみれは地下鉄でも難を逃れてだった。
そうして百貨店に入るとだった、メモを取り出した。母が書いたメモに買うべきものが全部書いてあった。
すみれはそれを全部買ってから家に帰った、そうして母に言った。
「難儀は全部ね」
「助かったでしょ」
「ええ、忘れものもなかったし」
事前に
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