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彼願白書
逆さ磔の悪魔
フォックス・レポート
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。」

壬生森は肩を竦めながら、呆れたように言う。

「結果で言えば、彼等は私の想定など既に越えた先にいた。彼等は強いよ。二十年前にいたら、何かは変わっていたかもしれないと思うくらいに。」

「二十年前のことを後悔しているの?」

加賀は壬生森の言葉に、静かに反論する。

「二十年前、貴方は確かに最善の手を打った。だからこそ、貴方と私達は『彼女』に手が届いた。私達はあの日と向き合うことを止めるわけにはいかない。そして、あの日を無為にしてはならない。そうではなくて?」

「二十年前のあの時、私は確かに手持ちの札で出来る最善の勝負をした。それは間違いないよ。その上でたらればを語るのは本当に、ただの無い物ねだりになってしまうね。」

飴を口の中で一転がし、ため息ひとつ。
壬生森は言葉を続ける。

「無い物ねだりで過去を悔いるのは誉められたもんじゃないね。ましてやあれだけのことをやっておいてそれを恥じるなど、冒涜も甚だしい。それはわかってるんだが……やはり難しいものだ。歯痒いものだよ。これだけの反芻を繰り返しても結局、他の手が思い付かない。そんな自分の進歩のなさがね。」

まるで他人事のように言う壬生森に、加賀は手を入れた袖の内から握り拳を引き抜く。

「……貴方が悔やんでいたことがなんなのか、やっとわかったわ。」

その握り拳を開いた中には、珊瑚珠の指環がひとつ。
戦闘中、必要としたならばと渡したそれ。

「貴方が悔やんでいるのは、無関係の艦娘約一千隻の犠牲でも、赤城さんのことでも、ましてや提督六人のことでもない。」

加賀が投げ返してきた指環を壬生森は片手で受け取る。

「貴方は自分の戦術構想の不甲斐なさこそを嘆いていたのではなくて?オムレツを作るのに割った卵を哀れむ者などいないように、積み重ねた犠牲を哀れむこともない。犠牲が手の内に収まらなかったとしても、手の内から溢した過失こそが問題で、溢したそれには本当はまるで興味がない。貴方はそもそも悔やんでなどなかった。どうしたら次はより多くを上手く踊らせることが出来るか。次はどうしたら敵をより上手く嵌められるか。策ばかりを飽くことなく考え続けていた。それが貴方の本来の性分。違う?」

加賀の言葉を静かに聞いていた壬生森は、改めて目を開いて、口を開く。

「なるほど……言われてみると、確かにその通りだ。私は今まで、犠牲にしたことを悔やんでも、犠牲になったものを惜しんだことはないのだと思う。」

「そんな貴方が、今回はブルネイを捨て石にするのを拒んだ。自分の進歩の無さが歯痒い?何を言う。貴方は間違いなく、あの時の貴方が考えもしなかったところまで来た。」

「丸くなった、弱くなった、老いさらばえた、そこら辺が妥当だと思うが?」

「馬鹿を言うの
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