逆さ磔の悪魔
フォックス・レポート
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そのくらいはやってもおかしくない?だって、太平洋戦争は『エンタープライズの英雄譚』って言うのすらいるんだよ?」
「同感ですわ。私も最後の最後まで『エンタープライズ』だと思ってましたもの。」
熊野は缶箱を受け取ると、飴を鈴谷の手にひとつ出し、自分の手にひとつ出し、加賀に缶箱を手渡す。
「そう、エンタープライズなら。そう思ってしまう私達の恐れ、トラウマ。それがリバースド・ナインを手の付けられない怪物にしたのよ。本当の敵はその恐れこそを実現させる歪んだ願望器。だからこそ私達にとって常に一番困る手を打ってきた。私達の『あってほしくないこと』を引き起こすのだから、当然のことよ。」
「先手を打たせるわけには、と思うほど強烈な奇襲を受けるし、これ以上は対抗出来なくなる、という数の戦力で襲撃されるのも、そういう絡繰りだったわけね……」
「でも、それってつまり『鈴谷達が思い描く以上の最悪な状況』には出来ない……ってことじゃない?」
鈴谷の何の気なしに言った一言に、壬生森以外の全員が振り向く。
「え、なに?鈴谷、変なこと言った?」
自分が何を言ったのか、わかってなさそうな鈴谷の狼狽える顔を見たあと、更に全員が壬生森のほうを見る。
「……アンタ、いつから気付いてたのよ!」
叢雲が壬生森に詰め寄る。
「ん、最初から。」
「……アンッ……タねぇ!最初から本命がヴェスタル、ってわかってたらなんでこんな回りくどいことをしたのよ!」
壬生森の両肩を掴んで迫る叢雲の姿は端から見れば、歳の離れた兄に強引なおねだりをする妹のように見えただろう。
「説明が必要か?」
「いらないわよ!アンタが言いそうな理屈くらい、私にはわかるわよ!」
壬生森の肩を掴んだ手が力んで震える。
叢雲は軽く呻いて、手を離してがくりと肩を落としながら離れる。
「こう言うんでしょ?『ヴェスタルを引っ張り出すにはエンタープライズが大破するほど追い詰めなければならない。だからこそエンタープライズの撃破を第一目標とする必要があった。』とかそんなんでしょ?……そうじゃないわよ。」
叢雲は肩を落としながら壁を背にずるりと崩れるように座り込む。
「ごめん……わかってんのよ。エンタープライズの大破という状況再現で、本体であるヴェスタルを最前線に引きずり出す。そうしなければ、ヴェスタルは表舞台には立たないし、私達はヴェスタルを捉えられない。奴はそういう存在だった。そういうことでしょ?」
「あぁ、正直に言えばあまりスマートな戦い方じゃあ、なかったとは思う。ブルネイが実際のところ、どこまでやれるかは未知数だった。アッサリと壊滅的被害を受けるようなタマではないとは思っていたが、これが希望的観測であろうこともまた、否定出来なかった
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