556部分:第三十三話 星はあらたにその一
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してだ。王は言うのだった。
「それでどうして都なのか」
「この町は都ではなく」
「ただの町だ。ワーグナーを追い出し芸術を拒んだ町なのだ」
「この町はもう芸術の都にはなれませんか」
「ワーグナーを拒んだのだ」
それが理由だった。最早ミュンヘンがそうなれない。
「そしてワーグナー自身もこの町を去った」
「バイロイトに移られましたね」
「バイロイトに歌劇場を築きそこに住む」
ワーグナーは既にそう決めていてだ。実際にもうバイロイトにいた。
その費用はいつも通り王が受け持っていた。その王が言うのだった。
「最早そうなってはだ」
「ですがバイエルンは」
「芸術の国になれるというのか」
「そうではないのでしょうか」
「かつてはそうなれたかも知れない」
話は既に過去のものになっていた。
「だが今は」
「それもなり得ないと」
「ワーグナーは大きい」
皮肉ではなかった。王は皮肉は言わない。
率直にワーグナーを認めてだ。こう言ったのである。
「その大器故にだ」
「あの方はどうされたのですか?」
「バイエルンに留まらずドイツに羽ばたいたのだ」
ワーグナーは今やドイツの楽聖になっていた。バイエルンだけではなかったのだ。
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