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永遠の謎
555部分:第三十二話 遥かな昔からその十六

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第三十二話 遥かな昔からその十六

「そんなことはない筈だ」
「では私は」
「そなたもまた希望だ」
 王はまた言った。
「私にとっては。だからこそ」
「こうしてですか」
「傍にいて欲しい」
 こう言うのだった。
「頼めるか」
「はい」
 ホルニヒに断る発想はなかった。王の願いを。
 それでだ。こう答えたのだった。
「喜んで」
「済まない。それではだ」
「これからもですね」
「共にいてくれ。私と共に」
「わかりました」
「では部屋を出よう」
 この寝室をだと。そうしてだというのだ。
「まずは食事だが」
「何を召し上がられますか」
「シェフに任せる」
 王はそのことについてはだ。こう答えた。
「そうさせてもらう」
「わかりました。それでは」
「その後は馬だ」
 こうも言うのだった。
「そして洞窟の中で音楽も楽しみたい」
「では音楽隊の方々にも連絡しておきます」
「そうしてくれ。手配は頼んだ」
「畏まりました」
「夜の中にこそ真があるのだ」
 王にはそう思えてきていた。孤独の中で。
「なら私は夜の中に生きよう」
「夜、昼から離れて」
「昼は企みに覆われている」
 トリスタンとイゾルデにあった言葉をだ。ここでも思い出す。
 そうしてだ。その昼を拒んでだった。
 王は夜を見てその中に入り。そうして言うのだった。
「だからこそ私は夜に生きるのだ。そのことについて」
「何か」
「そなたは受け入れてくれるのだな」
 そのホルニヒを見てだ。彼に問うたのである。
「その私を」
「私が陛下の希望ならば」
 そうすると。また答えるホルニヒだった。
「そうさせてもらいます」
「済まないな」
「御礼は」
「いいのか」
「はい」
 そうだとだ。また王に述べる。
「では今からですね」
「食事に。そうだ」
 言いながらだ。王はふと思い出した。あることを。
「白鳥だ」
「白鳥達を洞窟に入れてですね」
「そうして餌をやらないといけない」
 このことをだ。言いながら思い出したのである。
「迂闊だった。まずはそれだった」
「ではまずは白鳥達に餌をやり」
「そのうえで食事にしよう」
「畏まりました」
 こうした話をしてだった。王は一日をはじめるのだった。
 空に太陽はなく月が白い輝きを放っていた。その輝きは厳しいものではなく落ち着いたものだった。王はその月の下で生きていた。


第三十二話   完


                 2011・10・17

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