第6章:束の間の期間
第187話「抉られる心」
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なんだかんだと、打ち解けているアリサと鈴が軽口を叩き合う。
その証拠に、優輝相手のように年上なはずの鈴相手でも敬語を使っていなかった。
「しばらくは悪霊退治もできないわね」
「悪霊退治……?」
「普段の陰陽師……いえ、退魔師がやっている事よ。那美も度々やっているのだけど、聞いてないかしら?」
「聞いた事あるような……」
「ま、私の場合は自業自得で死んだ癖にやけに強い悪霊を退治してたのよ。……って、今はそんな身の上の話してる場合じゃないわ。ほら」
「あっ」
鈴に促され、アリシア達も手伝いに戻っていく。
鈴も鈴で、自分に手伝える事を手伝いに向かった。
「(良い目で見られないのは、覚悟してた。すずかのおかげで、予測も出来ていた。……でも、そうだとしても……)」
炊き出しや、物資の運搬をする中で、アリシアは自分に向かう視線を感じ取る。
「(……やっぱり、“そういった目”で見られるのは辛いなぁ……)」
実の所、半分程はアリシア達の容姿が良い事への視線なのだが、当の本人にとっては僅かな責めるような視線の方が気になってしまう。
その視線は、常にアリシア達の心を抉り続ける。
「(恩着せがましく思う訳じゃない。……でも、それでも、助けたと言うのに、この仕打ちはキツイものがあるね……)」
第三者からすれば、同じ組織の者の不始末を片付けていただけ。
そのために、そう考えている者は“恩”などは微塵も感じていなかった。
「アリシアさん」
「っ、蓮さん……」
心苦しく思っている所に、蓮が話しかける。
「あちらの方からの指示です。貴女方は、子供の相手をしてください、と」
「子供の……?」
「どうやら、指示を出す方は私達をちゃんと理解してくれているようです。心苦しく思う貴女方に、少しでも楽な思いをしてもらうために、指示を出したようです」
それは、大人びてきたとはいえまだ子供であるアリシア達に出された指示だった。
アリシア達の監視や指示を任されている政府の人間は、アリシア達が決死の覚悟で戦った事をしっかりと理解していた。
そのために、少しでも苦しい思いをさせないように配慮したのだ。
「でも……」
「……子供は、純粋です。組織的な責任なども関係ないでしょう。ですから、きっと気に病むことはありません」
「……分かったよ」
蓮に促され、アリシアはなのは達を連れて子供達の相手を務める事になった。
「(とりあえず、子供の前で暗い顔は出来ないね)」
少しでも気持ちを切り替えようと、アリシアは頬を軽く叩く。
同じような事を思ったのか、なのは達も深呼吸するなどして、気持ちを切り替えた。
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