第6章:束の間の期間
第187話「抉られる心」
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優輝と共にいた司と奏がすずかと同じことを懸念したタイミングだった。
その時の不安な気持ちが使い魔のパスを通じてリニスに伝わったのだ。
「あれ?でも、それだったらママの方が来るんじゃないの?」
「プレシアは……今のフェイトを見ると自分でも何をしでかすか分からないと考え、私に任せる事にしました」
「あ、プレシアさんもちゃんと考えてたんだ」
「(自制したとはいえ、それはちゃんと考えたと言えるのかな……?)」
むしろ、ちゃんと考えられなくなるためにリニスに任せた訳なのだが、そこを突っ込むのは野暮だろうと考え、アリシアはそんな思いを心に仕舞っておいた。
「……ねぇ、リニスは……私達の扱い、どうなると思う?」
「希望を混ぜた推測でしか語れませんが……何とかなりますよ。あの場で受け答えしている人達は、皆優秀ですから」
「……そう、だね……」
どことなく不安を残したまま、司はリニスの言葉に頷いた。
「想像以上に腹が立ったわ。何が起きていたか本当に理解しているのかしら?」
「戻って開口一番にそれか。いや、気持ちは分かるんだが」
今回は素性と事情の説明のための会談だったため、一旦会談が終了する。
用意された部屋に戻った直後、椿が苛立ちを隠さずにそう言った。
「一言目にどう責任を取るか。二言目も、その次も。……もっと別に言う事があるでしょうに!」
「責任を取ると言っても、その先に話が進まなかったな……」
どう返答しても同じような事ばかり。
その事に椿は苛立っていたのだ。
「今回は事情と素性についてだ。責任問題などの本題はまた明日となっている。……その時になれば、事件の経緯がどんなものだったか向こうも理解するだろう」
「……感情が消えたとしても、今の言葉が建前な事ぐらいは読み取れるわよ」
「……ばれていたか」
会談中もずっと黙っていた優輝が気休めの言葉を言うも、椿にすぐ看破される。
「あれは目の前の事実を受け止めようとしていない。妖に対しても、“得体の知れない化け物がいた”とまでしか認識しようとしていない。……何があったか、実際どんな存在だったか、その先へ踏み込もうとしていない」
「要するに現実を受け止めきれてないって訳ね」
「何度もニュースとかで見てたけど、なんでああいう立場の人は皆頭が固いんだろうね。これなら秋葉原とかの方がすぐ受け入れてくれるよ」
自身は比較的安全地帯にいたため、実際にどんな惨状か見た訳ではない。
それも受け止めようとしない要因の一つだろうと、優輝は考えていた。
「……まぁ、オタク文化の聖地と政府を比べてもな」
「何はともあれ、重要なのは明日だ。
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