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ツインズシーエム/Twins:CM 〜双子の物語〜
ツインレゾナンス
第17話 知ってしまった想い
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ぎていなかったが、誰にも話しかけられずにいられるのならばエースにとっては割と好都合だった。


 それからも見知った人物と出会うこともなく、折り返し地点となる分岐点まで来たエース。このまま帰り道も誰とも会わず、頭の中を総とっかえして、心のモヤモヤを取り去って帰ることが出来れば最高の時間だった。

 だが、そうは問屋が卸さないようだった。

「あれ、フォンバレンくん?」

 突然自らの名前を聞き覚えのある声で呼ばれて、エースは後ろを振り返る。

 そこには、制服を着たいつものフローラの姿があった。1人でいることから、セレシアは先に学校の敷地内へと向かったのだろう。そうでなければ、この時間にここで、しかも1対1で会うことなどあり得ないからだ。

 本当ならばそのあり得ないをきちんと体現してほしかったのだが、もちろんそんなことは面と向かって言えることではないので、エースはいつもと変わりない様子を装いつつ言葉を返した。

「おはよう、スプリンコートさん。だいぶ早いな」

「うん、と言ってもまだすごく眠いんだけどね。いつも起こされてるし、そうでなかったとしても今日みたいな時間には起きないから」

 前回戻ってきた時にエースがフローラから聞いたのだが、こうして戻る日だけはいつもより起床時間が大幅に早く母親と同じ時間に起きてもあまり余裕がないらしい。前回は朝ご飯を実家で取ったため、電車の兼ね合いもあり学校の始業ベルに間に合わせるのすらそこそこ厳しい時間になったのだった。

 その時かなりきつそうだったので、今回は朝食をフォンバレン家で取ることにしたらどうか、と帰省前に提案したのが自分であったことを、エースは今更ながらに思い出した。どうやら、自分の首を絞めようとしたのは自分だったらしい。

 ちょっと苦い気分になりつつも、エースは交わされている会話を続けた。

「なんで起きれたの?」

「……なんでだろうね? 私も不思議。みんながびっくりしてたくらいだから」

「まぁ、そこは気合が勝ったということにしとこう」

 朝に弱いということを知っているが故に、これほどまでに早く起きれた理由は皆が知りたいところ。しかしながら、本人でさえも分からないのだから、他の人は一生それを知ることはない。

 エースは勝手に理由をつけて、納得することにした。

「あ、そうだ、休みの間にしたセレシアとの約束、きちんと果たさなきゃ」

「約束?」

「うん。『帰ったらこれ言ってあげなよー』って」

 2人の間で交わされた約束の内容は、もちろんエースには分かるはずもない。ただ、セレシアの入れ知恵らしいので、何となくだがそういうことなのだろうなぁ、と勝手に納得する。

 その次の瞬間には、エースが心構えをする余裕すらもな
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