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戦国異伝供書
第二十三話 東国入りその六

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「だから源殿のそうしたことはな」
「見習わぬ」
「殿としてはそうされますな」
「そうしたところは手本とせず」
「そうしてやっていかれますな」
「そうする、そして鎌倉じゃが」
 今度は街並を見ての言葉だ。
「それなりに大きいがな」
「どうもですか」
「この街は」
「関東一円を治めるにはな」
 それはというのだ。
「手狭で場所も悪い」
「左様ですか」
「場所も悪いですか」
「どうも」
「南西に寄り過ぎておるわ」
 鎌倉はというのだ。
「だからここから関東を治めることはな」
「されませぬか」
「鎌倉の幕府の地であっても」
「それでもですか」
「ここには置かん」
 関東全体を治める政の場所はというのだ。
「そう考えておる」
「南西に寄り過ぎていますか」
「鎌倉では」
「では小田原もですか」
「関東を治めるには不便ですな」
「うむ、関東の西ならよいが」
 それだけならというのだ。
「しかしじゃ」
「関東全域を治めるとなると」
「鎌倉も小田原も駄目ですか」
「では何処になりましょうか」
「関東を治めるべき場所は」
「関東だけではなく奥羽も治める」
 この地もというのだ。
「東国全体をな」
「では何処がよいか」
「それが問題ですな」
「これからは」
「そうじゃ、無論西国と一つにする」
 東国はというのだ。
「そこまで考えるとな」
「何処に関東を治める場所を置かれますか」
「一体何処に」
「殿はどうお考えでしょうか」
「江戸じゃな」
 この地だとだ、信長は答えた。
「そこじゃな」
「江戸ですか」
「あの地ですか」
「あの地をお考えですか」
「あそこは開けて水運もよい」
 だからだというのだ。
「あそこに大きな城を置いてじゃ」
「そうしてですか」
「東国全体の治の要とする」
「そうされますか」
「そうする、しかもじゃ」
 さらに言う信長だった。
「江戸の周りはな」
「城下町はですか」
「それもですか」
「大きなものにする」
「そうお考えですか」
「東国一の街にする」
 江戸のそこもというのだ。
「城だけでなくな」
「殿、今江戸は」
 万見が言ってきた。
「城があろうとも」
「ほぼ廃城じゃな」
「その様ですし」
「その周りもな」
「一軒の家もです」
 それこそというのだ。
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