第二十三話 東国入りその四
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「暫く戦はせぬ」
「政に専念しますな」
「暫しの間は」
「そしてその後で」
「いよいよ天下布武の最後の仕上げですな」
「東北と九州じゃ」
この二つの地域になるというのだ。
「天下の東西の端じゃ」
「その両方をですな」
「組み入れ」
「そうして治めますな」
「そして伊代もな」
四国で織田家が唯一治めていないこの国もというのだ。
「手に入れるぞ」
「あの国もですな」
「今も領地にしていませんが」
「あの国もですな」
「手に入れますな」
「そうする」
必ずという言葉だった。
「全ては天下布武の為にな」
「天下の全てを領地にして」
「そしてその後で」
「天下の政ですな」
「それを行いますな」
「そうじゃ、戦っていくぞ」
まさにと言ってだ、そのうえでだった。
信長はこの度の一連の戦では最後になると思っている北条家の戦に向かっていた。だがその途中でだった。
飛騨者達からその話を聞いてだ、彼は真剣な顔で述べた。
「そうか、噂には聞いていたが」
「はい、忍城の甲斐姫です」
「この姫君が随分強いとのこと」
「まさに鬼武者の如きとか」
「凄まじい武勇の持ち主とのことです」
「あちらには佐吉や桂松を行かせるつもりじゃが」
それでもと言う信長だった。
「どうかのう」
「殿、ご安心を」
その石田がきっとした顔で言ってきた。
「例えどの様な者がいようとも」
「城を攻め落とすか」
「そうしてみせます」
このことを約束するのだった。
「ですから」
「そうか、しかしこれだけは言っておこう」
「何でしょうか」
「わしはお主達が武士としてあるまじきことをせぬ限りはじゃ」
そうしたことをしなければというのだ。
「決してじゃ」
「処罰はですか」
「せぬ」
このことを告げるのだった。
「一切な、だからな」
「若し忍城を攻め落とせずとも」
「安心せよ」
処罰はしないとだ、信長は石田に再び告げた。
「そのことはな」
「そうですか」
「そうじゃ、しかもあそこの主は中々の者」
甲斐姫の主である成田長泰もというのだ。
「だからな」
「油断は出来ませぬか」
「そのことも言っておく、関東に入ればじゃ」
その時はというのだ。
「お主達に兵を預けじゃ」
「城の一つ一つをですか」
「攻め落としていってもらう」
北条家の諸城達をというのだ。
「北条家の守りは小田原城を軸としてそれぞれの城をつなげた護りにある」
「ですからその城をです」
黒田も言ってきた。
「攻め落としていけば」
「小田原城だけになるからのう」
「流石の北条家といえど」
「降るしかない、しかも籠城していれば何時か敵は帰るか」
それはというと。
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