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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 13
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の足は、自然と浮き立つが……

「ならん! お前達、自らの枷を無理矢理外して楽園を目指さんとすれば、完全遮音の密室内で絨毯の上に落ちた羽毛一枚の音すら屋外から聴き分け、千国隣の雑踏に紛れて起きたすれ違いざまの窃盗をも時間のズレなく見通す女悪魔に、笑いながら全力で(ほふ)られるぞ! 真実、心の底から! お遊戯を嗜むが如く、愉悦を味わっているかのように、高笑いされながら……だ! 素直に怒られたほうがどんなにマシか、解らぬお前達ではあるまい??」

 人としての理性に阻まれ。一様にガックリと、力無くうなだれた。

「ああ、人の身のなんと無力なことか!」
「これも、我ら『生贄』に科せられた罰だと仰るのか……っ」
「目の前に癒しの泉が見えているというのに! なんたる残酷! まるで、待てをしている礼儀正しい飼い犬にでもなった気分だ!」
「ある意味ご褒美ってところが、グウの音も出せなくて悔しいっ!」
「アリア様は……我らを見放されたのだ……」

 主神様は、とんだ風評被害(とばっちり)を受けた。

「現実とは、常に弱者を苛むものよ。だがな……どんなに長い時間でも息を潜めて耐え忍び、諦めずに機を窺っていれば。そして、機を逃さなければ。幸福は必ず、この手に掴めるのだ。必ずだ。意味は解るな? 同朋達よ」

 五十代前後の男性司教の後ろからそっと顔を覗かせた、やはり五十代頃と思われる中肉中背の男性司教が、聖職者の肩書きに恥じない、慈愛に満ちた視線と仕草を『生贄』達へ贈る。

「機を、逃さない……」

 複数の虚ろな目が、復唱した言葉と共に、じわりと高度を上げる。
 その先で細い体をしならせて立つ、一目では壮年か中年か不明で妖艶な、どことなく軽薄な印象も与える女性司教が、こてんと小首を傾けた。

「言ったでしょ? 第三王子殿下は、閣下に名指しで()()()()の。つまり」
「?? ま……まさか、殿下は??」

 雷撃を食らった鳩のように、バババッと顔を上げる信徒達。

「司教様方は、この為に調理場へいらしたのですか!」
「そうとも! まさに、今がその時!」

 視線の集中砲火を浴びた四大司教は鷹揚(おうよう)に頷き、声を張り上げた。
 誰かが「おお……っ」と呟く。

「さあ、我が同朋達よ! その百合根を天高く掲げよ!」
「女神アリアへの敬愛と忠誠を、行動をもって、彼の御方に示すのだ!」

 感嘆の呟きは一つ二つと増えていき。
 最後には、総員の勇気を讃える雄叫びとなる。

「すべては??」


「「「閣下への心証を、少しでも底上げしてもらう為に??」」」


 通りすがりの別班員

「いいから早く、仕事して」





vol.19 【会議室に
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