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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 13
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 同じ空間で各々作業していた男性信徒約三十人全員が、殺意に似た何かを青年に向けて勢いよく一斉放出する。

 プリシラと双子並みの外見でありながら、プリシラとは正反対の性格で、しかも公然と『生贄』の扱いを受けているミーちゃんことミートリッテは、中央教会に住む『生贄(信徒)』達の間で驚異的な人気を誇っていた。
 そしてその人気ぶりを把握したプリシラによって、今では()()()()()()()()()()という希少属性まで付与されており。
 神秘性を増したミーちゃんへの男性信徒達の好意的感情というか妄想は、ほとんど崇拝の域にまで達している。

 当然だが、信徒達にミーちゃんと親し気な呼び方をされていることなど、ミートリッテ自身はまったく知らない。

「ぃや、そこまでは……俺だって、間接的に聴いただけだし……っ」
「なら、お前に聴かせた奴を連れてこい! デマだったら承知しねぇぞ! 俺達のミーちゃんを弄んだ罪、きっちり(あがな)ってもらう!」
「「「そーだそーだ??」」」

 くつくつ煮える鍋の周辺で熱を上げていく、嫉妬という名の感情論。
 又聞きしただけのウワサ話をうっかり自慢気に語ってしまったばかりに、迂闊な呟き一つで速攻袋叩きにされる絶望の淵へと追い詰められてしまった哀れな青年は、鱗片入りのザルを抱えてガタガタと震え出し……
 ミーちゃんよりも接触率が低い人間達に助けられた。

「まあまあ落ち着け若人よ。気持ちは分かるが、重要なのはそこじゃない」
「「「……え? え?? し、司教様方??」」」
「ちょいとお邪魔しますよ、と」
「え? えええっ? 四大司教様が何故、調理場(こんなところ)に??」

 四大司教とは、中央以外、東西南北の四区をそれぞれ預かる司教である。
 立場的には、四人揃ってアルスエルナ教会の第三責任者なのだが。
 本来は各区の中心街で生活しており、中央教会には定期連絡や定例会議、各自報告案件などがある際にのみ現れる。


*なお、百合根感謝の日に集まっていたのは何代も前からの習慣であって、プリシラが外出の許可を取る為に召集したわけではない*


「まあ聴け、同朋達」

 最初に声をかけてきた五十代前後の、ガッシリとした体型の男性司教が、荒ぶる馬を抑えるように両手を前に出し、唇の端をニヤリと持ち上げた。

「閣下が出掛けたのは、事実だ。彼女に名指しで頼られた第三王子殿下も、今は二階の会議室で護衛騎士と、ミーちゃんと共にお控えくださっている」
「な?? ミーちゃんがっ??」
「今、この瞬間、二階の会議室に??」

 呆気にとられていた調理場の空気が、ミーちゃんの所在情報一つで蠢く。
 崇敬の念に忠実な彼ら
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