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ツインズシーエム/Twins:CM 〜双子の物語〜
ツインレゾナンス
第14話 望まない再会
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 フローラは基本的に、昼の時間はセレシアと一緒に昼食をとることが習慣となっている。日によって迎えられる方がセレシアかフローラかの違いや、他に加わる人数の差はあるものの、基本的にこの時間だけは必ず一緒にいる。

 そのことに関しては例えフローラが保護中の身であっても変わることはなく、今日もフローラのいる教室の外からは、いつものようにフローラを呼ぶセレシアの陽気な声が響いていた。

「フローラ、一緒にお昼食べよー?」

「いいけど、ちょっとだけ待ってて」

 窓から姿を覗かせて、弁当を指し示しながらこっちをニコニコ見ているセレシア。少し羨ましく思いつつも、フローラは先ほど急いで購買にて買ってきたパンの入った袋を、通学用のカバンから取り出す。

 いつもなら取り出すのは親が持たせてくれた弁当なのだが、現在は保護中の身ということで親には会えない。昨晩ミストに弁当作ろうか? と言われたものの、流石にそこまで負担をかけるわけにはいかなかったので、フローラはこれから数日は購買のパンで済ませるつもりであった。

 そしてこれは、いつも昼食を共にしているセレシアならば気づいて当然の違いである。

「ん、今日はパンなんだねー。珍しい」

「まぁ、色々あってね」

 自然な流れで繋がった何気ない会話に、細かいところを曖昧にした理由をつなげていく。

 今朝のこともあり目の前にいるセレシアはすでに詳細な事情を知っているが、その他大勢の生徒は現在フローラが置かれている状況は一切知らない。そういった知らない大勢をごまかすための、本当であって嘘にもなる理由だ。

「で、どこに行く?」

「屋上はどうかな?」

「屋上かぁ……フローラ、大丈夫なの? あれ、まだ3日くらい前の出来事だよ?」

 セレシアのいう『あれ』というのは、3日前の放課後、フローラが屋上にてローブ姿の人物に襲われた事件のことである。経った時間の中に詰め込まれた出来事のせいですでに過去のことのようになりつつあるものの、日数的にはまだまだ最近の話である。

 おそらくセレシアは、そのことによる精神的なショックの有無を気にしているのだろう。

 だが、フローラの中では周囲が思っているほどひっかかりがあったわけではなく、むしろ自分でも驚くほどスッと飲み込めていたのだった。

「私は大丈夫だよ。そのことに関しては気にしないで」

「なら気兼ねなく屋上行けるねー。誰か他誘う?」

「ううん、2人で食べよ。色々とお話したいから」

 隠し事はあまりしたがらないフローラだが、それはフローラが一切秘密を持たないこととイコールではない。誰しもが何かしらの秘め事を持つように、フローラにもその類いはもちろんある。普段はそういう隠し事のための嘘をつくことが苦手だと
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