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魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
第一部
第10話 メイドの使い方+Merry Christmas
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でおこう。

 メイがいきなり琴葉に殴り掛かる。やっぱり始めやがった。

「わ、やべっ」

 昨日とは変わり、琴葉はそう声を漏らすと、腕を自分の前で交差させて、防御の態勢を取る。昨日はそんな事しなかったのだが、如何為たのだろう。


 すると、メイの拳が琴葉の腕に"当たる"。


 看守室の壁に打ち付けられた琴葉が、血を吐き出す。昨日はスカだった攻撃が当たる様になっている?

「……はー、怖い怖い。どんな怪力メイドだよ」
「……おわっ」

 ……と、其処で、俺は要に抱えられて、琴葉の近くまで移動させられる。琴葉でさえとんでもないピンチなのに、え、俺も巻き添い? 要、頭狂ってんのか?

「要は九〇四番を医務室へ。翁に『奥に通して』って伝えて。もしメイドが襲ってきたら、すぐに連絡。分かったんならさっさと行け」
「はいはい……人使いが荒いなぁ」

 要は一人で看守室を出て行く。自分だけ逃げたようにも見えなくは無いが、グレースを守ろうとしているのかな? 一応。

 琴葉を見てみると、看守服の袖から血がぽたぽたと垂れている。
 いきなり襲ってくる恐怖で、足が震える。

 ……此処で死ぬのか?

「……って、レン。何に怯えてんのさ」
「はっ?」

 琴葉が振り返って、淡々と言う。
 そのすぐ後ろに、イドの姿。

 刀を構えたイドは、確実に琴葉の首を斬るつもりだ。


 ―――実際、イドは琴葉の首を斬った。


「…………え?」


 頬に生暖かいモノが当たる。

 琴葉の体が傾き、こちらに倒れてくる。

 後ろでメイが口の端を吊り上げて、笑っている。

 イドが刀に着いた血を拭いている。


 まさか、本当に死―――


「レンの心配性」


 琴葉の声。……幻聴?

 そう疑うが、次の瞬間にドガン! と物凄い音が、刑務所内に鳴り響く。


「私が殺されたくらいで死ぬわけ無いじゃん」


 音の先には、血塗れの琴葉が。

 その前に…………誰だか分からなくなるほどまでぐちゃぐちゃになった……メイとイド。

 琴葉がニヤリと笑ったのを見て、思わず―――


「ぎゃああああぁぁぁぁぁあああああああ!!!!」


 と叫び、看守室を飛び出した。


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