548部分:第三十二話 遥かな昔からその九
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第三十二話 遥かな昔からその九
そのことをだ。ビスマルクは話すのである。
「聖杯城の王となるのだからな」
「槍と聖盃を守護するですね」
「その王となる」
「ではバイエルン王は」
「まだ槍と聖盃は持ってはおられない」
それはないというのだ。
「だがあの方は紛れもなくパルジファルだ」
「その御心がですか」
「そうなのですね」
「そうだ。だからこそあの方に媚やそうしたことは意味がない」
ビスマルクにはわかっていた。王の心を。
だからこそだ。彼は今言うのだった。
「むしろ不興を被るだけだ」
「しかしバイエルン王は近頃です」
「どうも奇行が絶えません」
周囲がだ。不意に怪訝な顔になりこう話をしだした。
「御一人での観劇にしても深夜で馬車を走らせることも」
「それに近頃ミュンヘンにあまりおられません」
「バイエルンにばかりおられます」
「そして宮廷でそのことを懸念する声が出ている様です」
「バイエルンの宮廷においても」
「そんなことは些細なことだ」
ビスマルクはそうしたことは何でもないと述べた。
「気にすることはない」
「御一人の観劇もですか」
「かなりの浪費になっている様ですが」
「あの一連の築城も問題になっていますし」
「それがどうしたというのだ」
まただ。ビスマルクはこう言った。
「あの方が残されること、そしてその御心を癒すことを考えればだ」
「そうした浪費もですか」
「大したことはないのですか」
「今バイエルンを悩ませている一連のことも」
「そうだと仰るのですか」
「どうしても浪費が問題になるのなら」
そうならばだと。ビスマルクは驚くべきことを言った。
「私があの方をお救いする」
「閣下がですか!?」
「ドイツの宰相である閣下がですか」
「あの方を救われるのですか」
「バイエルン王を」
「あの方が築かれている城のことは聞いている」
ビスマルクの目は千里眼であり耳は地獄耳だ。それでバイエルン王の築いている城のことも知っていた。そしてそのことについてだ。彼は言うのだった。
「是非築かれるべきだ」
「だからこそですか」
「芸術として、ですか」
「それ故に閣下がですか」
「あの方に助力されますか」
「私でよければそうさせてもらう」
ビスマルクはこうまで言った。
「あの方の素晴らしい業績を助けられるのならばな」
「何と、そこまでですか」
「そこまで考えておられるのですか」
「何度も言うがあの方はドイツにとって素晴らしい財産なのだ」
バイエルン王という存在そのものがだというのだ。
「聡明であられるだけではない。凡人には見えないもの、そして考えられないものが見えて考えられる。そうした方なのだ」
「だからこそですか」
「あの方の築
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