1st season
12th night
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
最速。
紛うことなき[本物]──[気まぐれな旅人]――
その黒い影がCL7に近づくと、まるで相手にする気は無い、とばかりに猛然と接近。パッシングすら無く後ろに張り付かれる。
「……上等、前みたいには行かないからな!」
奮い立つ天使はさらにエンジンに喝を入れて疾走。旅人は淡々と追撃を掛ける。神田橋を起点に、流離いの天使の孤独な戦いが幕を開けた。
C1で火花を飛ばすCL7。呉服橋をアウトインアウトで抜けると、先の江戸橋で踏み抜いて体勢を整える。江戸橋JCT、急コーナーをアウト側ギリギリから差し込み立ち上がりを活かす。天使はマシンの性能を最大限に引き出し、無理を超えないような滑らかさをもってCL7を走らせる。
「離れねぇ……何て奴だ」
対する旅人はまるでステップを踏み、踊るかの様に天使を追う。不気味なまでの静寂がマシンを包み、エンジン音だけを轟かせながら。コーナーを1つ抜ける度旅人が迫り、抜けた先で天使が僅かに離す。
「やっぱり車重の差は大きい、か……」
同じFFスポーティ車とはいえ、CL7は4ドアセダン。ユーロRと題しなおかつチューニングした所で車重は如何ともし難い。それでも高い性能と汎用性を誇るのは、ホンダのこだわりが産んだ結果に他ならない。
「考えろ……アイツより優れている箇所は……」
車重、不利。
コーナリング、若干不利。
ブレーキング、不利。
立ち上がり、有利。
パワー、若干有利。
トラクションとパワーはCL7の方が上。
ならば勝負を仕掛ける場所は───
「このまま芝浦JCTを直進して羽田でちぎる!」
勝利のビジョンが浮かんだ天使は奮い立つ。勝てる、その確信が天使にはある。見えた直線を踏み抜く。ほんの僅か、旅人が離れた。
「よし……次はッ」
銀座のシケイン。イン奥側を掠めて侵入。ギリギリのスピード領域で、ラインが膨らみそうになるのを堪える。
「抜けた!行ける……頼むぞCL7!」
天使の期待通り、マシンはミドルラインで踏みとどまる。軽く振り返してアウトに寄せ、次のコーナーを最短距離で駆け抜けた。まさに最高のライン。それでもルームミラーが眩しくなる。
「流石は[本物]、やるじゃねぇか……だけどな……!」
もはやなりふり構わず、天使は駆け抜けていく。安全マージンもかなぐり捨て、最短のラインでトンネルに飛び込む。一般車を軽いブレーキで躱し出口に向かって加速。K20Aが一層高らかに吠え、エネルギーを絞り出す。
「いかせねぇぞ……絶対引かねぇ!」
汐留JCT、クリア。この先にある2連コーナーさえ抜けてしまえば、もう天使のマシンに旅人は追いつけない。天使はルームミラーを
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ