第三章
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「じゃから呉に戻ってきたな」
「そうです」
「ならええ、もう悪いことはするな」
「わ、わかってます」
怯えている様子でだ、親父は山本に応えた。だが。
娘を送ってからだ、山本は井伏に街の中を歩いてその兄を探しつつ話した。
「あいつは厄介な奴じゃ」
「こんなが呉を治めてる時にか」
「ああ、危ない魔術の実験しててな」
「それでか」
「呉を追い出したんじゃ」
所払いにしたというのだ。
「暫くな」
「それでその所払いの時が終わってか」
「戻ったな」
「そうか、そんな奴か」
「あいつが関わってるとな」
「どうなるか」
「そうじゃ」
それでというのだ。
「あいつが関わってると思うとな」
「まずいか」
「ああ、しかもあいつがわしと会って話してどうじゃった」
山本は井伏に顔を向けて問うた。
「一体」
「明らかにな」
井伏も山本に顔を向けてすぐに答えた。
「おかしかったのう」
「あれは悪事してる態度じゃな」
「ああ、多分娘さんの兄さんのことはな」
「あの親父が関わってるな」
「間違いなくのう」
こう言うのだった、そして二人で街を歩いて娘の兄を探していたが手掛かりは多い。目立つ外見なので見かけた者は多い。
だがその見た時間はいつも夜だった、それで山本は夜に官舎に入った。かつて山本が暮らしていた場所だ。
そこに入って晩飯を食いつつだ、二人で話した。
「兄さんは夜か」
「夜にしか出会った奴はおらんのう」
「というとな」
「昼は何してるんじゃ」
「そこが気になるのう」
そのことを話していた、するとだった。
「どうにも」
「そうじゃな」
二人共このことが気になった、そして井伏は山本に尋ねた。
「それでこんなが裁いたあの親父は具体的に何やったんじゃ」
「魔術の実験をしとったんじゃがな」
「その実験がか」
「もう見境がなくてのう、これ以上はあかんって思ってな」
それでというのだ。
「わしが捕まえさせて裁いたが」
「あれは反省しとらんな」
「反省しててわしの顔見てあんな風にならんわ」
仰天してだ、怯えた様にはならなかったというのだ。
「またやっとる、あの親父を何とかするのも試練かものう」
「そうじゃな、それでじゃな」
「あの親父についても調べるか」
「それか警察に調べさせるか」
「それも手じゃな」
今度は親父のことを話した、そうしつつ晩飯を食べているとだった。
夜に詰めている役人が来て二人にこう言ってきた。
「あの、夜ですが」
「何じゃ、ヤクザ者が喧嘩したか」
「その騒ぎを収めなあかんか、ほな行くか」
「いえ、違います、人探しの依頼です」
「何っ!?」
二人は役人の言葉に同時に声をあげた、そうしてだった。
その依頼者を役所の中に入
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