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魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
第一部
第8話 今更だけど
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ン」
「いや、普通に見たら分かる…………」
「んな訳あるかこのっ」
「あいてっ」

 シンと話していると、急にグレースが後頭部を叩いてくる。…………地味に痛い。
 頭を抑えながらグレースを睨むと、グレースはビシッと人差し指を立てながら言った。

「どっかのちっちゃい看守は別として、あれが魔法だって気付くのは、魔力を見ることが出来るレンだけだからね? 俺達、完全に銃だと思ってたし。ホント、あのちっちゃい看守もキミも、羨ましいぁ」

 後ろでハクとシンがうんうんと頷いて―――


「それはどうもありがとうだが"ちっちゃい看守"とは誰のことかなぁ? えぇ?」


 いたが、後ろから何者かに頭を掴まれ、動かせなくなったようだ。
 二人とも真っ青な顔をして、絶えず冷や汗を流している。

 声の主は、間違えなく―――


「打っ殺す。特に九〇四番」


 琴葉だった。


「「「「ギャァァァアアアアアアアア!!!!」」」」


  ◆ ◆ ◆


「はっ、早く逃げろぉおお!!」
「グレースくん、顔面崩壊してる!!」
「おい、看守!! 止まれ!」
「……………………助けて」

「てめぇらマジ許さん!!」

 現在、通路に沿って逃走中。
 何度も罠が発動されるが、グレースとシンがそれを破壊しつつ、どうにか逃げている。
 鬼との距離、十メートル。

「てめぇら、この修理にどんだけ時間掛かると思ってんの! 三分だよ三分!! 要をシバくのに十分な時間だよ!! カップラーメン作れるんだよ!!」
「三分で何が出来るって聞かれた時、琴葉ちゃんがカップラーメン出すとは思わなかった!! ってか、要ちゃんシバくてどゆこと!?!?」
「黙れ九〇四番!! てめぇの声を聞くと苛ついてしょうがない!!」
「ひど……い…………」

 鬼との距離、八メートル。

「逃げるな馬鹿! 囚人なんだから大人しくしていろや! どうせ、ロクな理由も無く脱獄したんだから!!」
「勘違いしちゃ駄目だよ、琴葉ちゃん!」
「じゃあ理由を言ってみてよ!!」
「琴葉ちゃんと鬼ごっこするため!」
「幼稚! くだらない!! ドヤ顔するな!!」

 鬼との距離、六メートル。

「くそっ、もう諦めろ!! もう打開策なんて考えられないくらい追い込まれてんでしょうが!!」
「看守は僕達を甘く見すぎだ! 殺すぞ!!」
「囚人が看守に"殺す"と脅すのか? 良い度胸してんじゃねぇかその腐った性格叩き直してやる!!」
「腐った……せい、かく…………」

 鬼との距離、四メートル。

「…………疲れた、死ぬ」
「おおぅ!? 休めよレン!」
「や、置いて行かれる……」
「いや、知らねぇから房から出んなよ」


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