一匹狼っていうけどそもそも狼は群れる生き物だと知識人アピしてマウント取るのもどうかと思う。って短編
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の理知的殺意が融合した絶殺宝具だ。人間の狡猾な追い詰め方が具現化した「宝具のレンジ内で首狩りに優位な偏差が生ずる」という必殺の状況を作り、そこにロボが必殺の殺意を注いで首を裂く。
これがヘシアン・ロボ最強にして唯一の切り札。
相互理解不可能、憎悪を撒き散らす獣の絶対的殺意。
『遥かなる者への斬罪』
この女が何者かは知らない。自らの最大の武器である鼻が、この女には効かない。臭いのない存在――だが、この人外に溢れた世界では「そういう人間」もいるだろう。何よりも自らの優位を疑わない女の目が、ロボを苛立たせた。
さぁ、貴様の血は赤かどうか、首を切り離して確かめてやる。
「ま、当たらないんだけど」
「――ッ!?」
するり、と。
ロボの全力の一撃は、何事もなかったかのようにチェインの体を通り抜けた。
なんの感触もない。体もぶつかった筈なのに感触の一つもない。驚愕に振り返ったロボの目には、先ほど必殺の間合いに追い詰めた筈の人ならざる女が何事もなかったかのようにそこに立っていた。
ロボは知らなかった。彼女は確かに人外であり、その種族名を人狼と呼ぶことを。そして、人狼は人狼でも、彼女は月夜に吼える毛むくじゃらの怪物とは全くの別物――その気になれば因果の糸さえすり抜ける「不可視の人狼」であることを。
いくら必殺の間合いを作ろうが、必殺の一撃を放とうが、全てが無駄。
彼女に届きえる攻撃手段を持たないことは、そのまま彼女を決して倒せないことに繋がる。
これが、彼女の力、『存在希釈』。
どんな拘束もどんな因果追跡も自らを希釈してすり抜ける、人狼最大の武器。
こと回避という一点に関しては、HLでも最強クラスを誇る異能の力である。
効かないのではなく当たらない。命中率に大幅な上昇補正を持つロボの宝具でも、もちろんゲイボルグでも当たらない。因果を逆転させたところで、心臓が希釈されて因果をすり抜けるのだから。
敗北を悟らざるを得なかった。ヘシアン・ロボはこの瞬間、チェインに対する戦意を喪失した。それは彼女がれっきとした人外であることもひとつの要因かもしれない。そしてカルデアで過ごした時間がヘシアン・ロボの心を弱くしてしまったのかもしれない。新宿で敗北したあの日、少なくともロボとしての自分は、悪くない結末を迎えたのだ。
ヘシアン・ロボはそれ以上抵抗しなかった。
勝利は不可能。相手は人間ではない。納得できる死とは言えないが、人間に殺されるよりはましだった。チェインはそんなロボをみて、何故か周囲をちらちらと見まわしたのち、手を翳す。
そして――もさっ、とロボの首元を触った。
「……………」
「……………」
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