一匹狼っていうけどそもそも狼は群れる生き物だと知識人アピしてマウント取るのもどうかと思う。って短編
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ている。
見たことのない獣だ。とても野生の生物としてここにいるとは思えないため、チェインはすぐにそれを魔獣の類と推測した。魔獣を町に放つことに定評のある堕落王フェムトからゲームのお誘いはなかったので、多分だが別の誰かが作った実験魔獣が逃亡してここにいるとかだろう。
(でも、なんか変。姿が余りにも普通すぎる)
何言ってんだこの人と思われるかもしれないが、HLじゃ背中に首なし男を乗せた巨大な狼など、趣味的ではあるが普通としか思われない。HLのデフォルトかつトレンドといえば宇宙生物もしくは魔界の邪悪な生物感があるヌメヌメしたりデロデロしたりしているものだ。決してフサフサしているものではない。
どうしたものだろう、とチェインは考える。
(手負いの獣、襲ってきても可笑しくないと思うんだけど、戸惑っている……?)
見るからに危険そうな生物だ。少なくとも一般人にはどうしようもない力を持っているだろう。しかし今のところ、この手の生物が脱走したとか人を襲ったといった話は彼女の耳には届いていないし、自分も襲われてはいない。時間差であとから届くことはありえるとして、うっかり殺して後から大変な事態に、なんてことは避けたい。なにせ魔獣だ。死後に何かしら影響をばら撒いてもおかしくはない。
ひとまず写真を撮影して報告し、スティーブンの指示を仰ぐべきか。
それともリスクを承知でこの見るからに危険そうな獣の心臓を止めるべきか。
だが、その一瞬の判断の中に冷たい殺意の気配を感じた狼の反応は早かった。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!」
咆哮と同時、背に乗っていた首なし人間のマントが鋭い刃となって次々にチェインに飛来する。しかしチェインもこの程度は予想していたため、マントを避けていく。人外の存在、人狼であり修羅場を潜ってきたチェインには造作もないことだ。
だが、同時に襲い来る刃を避けながら、チェインは違和感を覚える。
(おかしい……自分の思ったように避けている筈なのに、誘導されてる?)
次第に自分のいる場所が、距離があの狼の間合いに都合のいい場所へと近づいている。もちろんそれを狙っているとしても容易に乗るチェインではないが、これは明らかに変だった。「思い通り避けているのに、結果的に誘導されている」。因果の偏り、或いは認識のずれ。この場にレオナルド・ウォッチがいれば彼の目は全てを捉えるだろうが、そればかりはチェインには逆立ちしても真似できない。
気が付けば逃げ場は消失し、巨大な刃を咥えた狼と自分は一直線上に並んでいた。
必殺の間合いにして必殺の状況。狙いすましたタイミングで狼が疾走する。
狼――ヘシアン・ロボは、勝利を確信した。
これはロボの本能的殺意とヘシアン
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