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永遠の謎
541部分:第三十二話 遥かな昔からその二

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第三十二話 遥かな昔からその二

「こうしてだ」
「だからこの様にされているのですか」
「そうだ。私は静かにしていたい」
 王のその願いである。
「一人でだ」
「だからこうされているのですね」
「そうだ」
 まさにそうだとだ。王はホルニヒに述べる。
 そしてだった。さらにこんなことも話した。
「許されないかも知れない。これは私の我儘だ」
「それは」
「素直に言っていい」
 王を気遣うホルニヒにだ。王は告げた。
「これは私の我儘だな」
「僭越ですが」
「そなたは嘘を吐かない」
 王がホルニヒを信頼し傍に置く何よりの理由だ。
「だからいいのだ」
「申し訳ありません」
「謝らずともよい。わかっている」
 こうも言う王だった。言いながらその顔は舞台にある。暗闇の中に浮かぶその舞台を観ながらだ。王は手を組み肘をボックスの上に置いて立たせて見ていた。
 そうしながらだ。王は言うのだった。
「我儘だ。そして浪費だ」
「そうなります」
「しかし私は耐えられないのだ」
 周囲の目にだ。そうだというのだ。
「人の視線に」
「前から仰っている様に」
「そうなのだ。どうしてもだ」
 王はそのことに苦しみを見せていた。
「見て。そして噂する」
「陛下のことを」
「人も視線も言葉も痛いのだ」
「弓矢の様にですか」
「そうだな。弓矢だ」
 それだとだ。王はホルニヒの言葉に応える。
「そこには毒がある」
「人の毒ですか」
「人は毒も持っているのだ」
 これは王独特の考えだった。その人の毒はというと。
「心に入り蝕んでいく毒だ」
「それが陛下を」
「常に苦しめてきた。だから」
 そのだ。視線や言葉をだというのだ。
「もう避けたいのだ」
「だからこそ今こうして」
「一人で観たいのだ」
 こう言うのである。
「観劇はだ」
「そして普段もですか」
「人は口さがない」
 王はまた言う。
「何かを言われるのは辛いのだ」
「ですが陛下」
「その周囲がどう言うかだな」
「はい、浪費だと」
「無駄な。私だけの為の公演だと」
 それはわかっているのだ。王もだ。
 わかっていないことではない。無論抵抗はあった王自身も。
 だがそれでもだ。王は観劇を楽しみたかった。それでだ。
 暗闇の中にそこだけ浮かび上がるロイヤルボックスの中でだ。ホルニヒに話すのだった。
「そうだとだな」
「そう言われることは」
「わかっている。しかしだ」
「それでもですか」
「私はこうしていたいのだ」
 噛み締める様な顔で。王は言った。
「人が辛いのだ。できればだ」
「できれば?」
「何らかのことで一人で観劇を観られれば」
 その夢もだ。王は述べた。

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