第二十二話 川中島にてその八
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「派手好きで戦の場でこそ働きと考えておってな」
「それで、ですな」
「傾いておるわ」
「そしてその傾きのままに生きる」
「そうした者達じゃな」
「左様ですな」
「それも生き方か」
人のとだ、柴田は考える顔になったままで述べた。
「人の」
「そうなのでしょう、まあ心根が奇麗なので」
ここでだ、滝川はこれまで場にいても一言も発していないある者を剣呑な目で見てそのうえでこう言った。
「いいかと」
「全くじゃな、何時何をするかわからぬ者なぞ」
林が滝川に応えて述べた。
「危うくてじゃ」
「殿のお傍にも」
「そう思うわ」
林もその者を見て言う。
「背中からぶすり、若しくは茶に毒」
「色々ありますな」
「お主もそう思わぬか」
林はその者自身にも問うた。
「どうじゃ」
「それがしもですか」
「そうじゃ、どう思う」
「そうですな」
その者松永は林の問いに飄々と笑って述べた。
「やはりです」
「そうした者はじゃな」
「安心出来ませぬな」
「そうじゃな」
「どうしても」
「ではじゃ」
林は剣呑な声で述べた、見れば今も羽柴以外の者は彼を剣呑な目で見ている。何かあれば刃を喉に突き立てんばかりだ。
「わかっておろうな」
「怪しい振る舞いはですな」
「せぬことじゃ、若し何かすれば」
「わしがいつもおるのだぞ」
森も言ってきた。
「槍はいつも磨いておる」
「そしてその槍で」
「そういうことじゃ、よいな」
「父上、その時はです」
長可が父に申し出た。
「それがしが」
「そうするか」
「いつも言っている通り」
「ならそうしてみよ」
「さすれば」
「とかくじゃ」
武井も松永に言う。
「お主、何時でもじゃ」
「何かあればというのですな」
「その素振りを見せればじゃ」
まさにその時はというのだ。
「覚悟しておくことじゃ」
「やれやれですな」
「何時動くつもりじゃ」
林通具も松永に問う。
「それで」
「お主が動かぬなぞ有り得ぬ」
こう言ったの前野だ。
「その機会を狙っているのであろう」
「さしづめ上杉との戦で我等が後れを取った時か」
これが坂井の読みだ。
「その時に動くか」
「その時若し何かしてみよ」
また森が松永に告げた、槍は手にしていないが心の刃は見せている。
「わしと勝三が動くぞ」
「おやおや、それがしは敵扱いですな」
「当家でお主を味方と思ってる者なぞほぼおらんわ」
中川がこのことをはっきりと告げた。
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