537部分:第三十一話 ノートゥングその十八
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第三十一話 ノートゥングその十八
暗い顔になりそのうえでだ。太子の言葉を受けた。
そしてそのうえでだ。その場をそっと離れたのだった。
気付けば王はその場から完全に消えていた。そうしてだった。
一人沈んだ顔になりだ。王はワインを飲みはじめた。
その王の傍らにだ。ここでもだ。
あの騎士が姿を現しだ。王に言ってきたのである。
「御気分を害されましたか」
「少しな」
そうだとだ。王はその騎士に答える。
ワインを入れているグラスを右手に持ちながらだ。王はその紅の透き通ったものを見ながらだ。そのうえでこう騎士に対して述べた。
「やはり私はもう臣下なのだな」
「至高の存在ではなくなりましたね」
「運命はわかっていた」
王としてだ。それはだというのだ。
「既にだ」
「王の上に立つのは教皇、そしてですね」
「皇帝だ」
ドイツ皇帝。まさにその存在がだ。
「その皇帝の臣下になったのだ」
「その通りです。しかしです」
「それでもだというのか」
「陛下の玉座は永遠のものです」
「永遠のか」
「この世の玉座から夢の世界の玉座に赴かれます」
騎士はまたこのことを語っていく。
「そしてその玉座はです」
「至高のものか」
「はい、陛下の為に用意されているのですから」
「聖杯城の玉座か」
「陛下はそこに座られるのですから」
だからだというのだ。王はこれからはだというのだ。
「今は憂いを感じられてもです」
「それはやがて終わるのか」
「ですから沈まれることはないのです」
「そうかも知れない。しかしだ」
それでもだとだ。王は話す。
どうしてもその臣下であることを意識してだ。それで言うのだった。
「私はどうしても」
「そこまで仰るのならです」
騎士は王の憂いが容易に消えないのを見てだ。ここで話を動かした。
こうだ。王に話したのである。
「城を築かれて下さい」
「城をか」
「はい、陛下が築かれているその城達をです」
築くべきだというのだ。さらに。
「そうされるのがいいかと」
「そうか。この憂いから逃れる為に」
「陛下の為にもなります」
その城を築くことはだというのだ。
「ですから是非です」
「わかった。それではだ」
王も騎士の言葉に頷く。そうしてだった。
王は静かにだ。ワインのグラスを置き。
そのうえでだ。騎士に述べたのだった。
「城を築いていく」
「陛下がこの世において果たされることを」
「そうしていこう」
「ではその様に」
「私の憂いは消えはしない」
王にとって憂いはそうしたものだった。まさに永遠のものだ。
しかしその永遠のものを手にしたままだ。王は騎士に述べていく。
「だがそれを少しでも払う為に」
「その為にですね」
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