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翠碧色の虹
第三十六幕:太陽を想う虹と
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美さんは黙ったまま深く頭を下げた。

時崎「ちょっ! 天美さん!」
心桜「ありがとう・・・ございます!」
時崎「そんな、改まらなくても・・・」
心桜「こんなに早く直してくれるなんて、思ってなかったから・・・」

俺は、オルゴールのネジを少し回して、蓋をそっと開けた。オルゴールがゆっくりと音楽を奏で始める。

心桜「うぅ・・・」
時崎「天美さん! 俺との約束! 忘れてないよね!?」
心桜「忘れてないよ・・・けど、ごめん・・・やっぱり、今すぐは無理だよ・・・」
時崎「・・・まあ、俺も偉そうな事は言えない・・・か」
心桜「え!?」
時崎「オルゴール、完全には直せなかったから・・・」
心桜「ちゃんと鳴ってるよ?」
時崎「この、衝撃でできた凹みだけは、直せなかった」
心桜「いいよ全然・・・」
時崎「天美さん!」

俺は、オルゴールの蓋を閉じて天美さんに差し出す。天美さんは、オルゴールを両手で受け取り−−−

時崎「あっ、天美さん!?」

天美さんは、オルゴールだけではなく、俺の手も包むように受け取り、そのままオルゴールを抱きしめた。天美さんの心の音と温もり・・・この上ない感謝の気持ちが俺の手に伝わってきた。

心桜「ありがとう。お兄さん」
時崎「あ、ああ・・・」

そのまま、どのくらいの時間が経過しただろうか。

心桜「こんなとこ、つっちゃーに見られたら大変だよ!」
時崎「え!?」
心桜「よし!」
時崎「!?」

突然、天美さんが大きな声を上げた。

心桜「約束だからねっ!」
時崎「あ、ああ」
心桜「お兄さん、凄く速かったから、てっきり無理だったんだと思って・・・ごめんなさい!」
時崎「いや、完全には直せなかったけど」
心桜「いやいや、音が鳴るようになっただけで十分だよ! ホントありがとう! 一生大切にするよ!」
時崎「そんな大袈裟な」
心桜「もうつっちゃーだけのオルゴールじゃないからね!」
時崎「え!?」
心桜「お兄さんの・・・なんでもないっ!」
時崎「???」
心桜「あはは!」
時崎「そうそう、オルゴールを保管する時は、完全に鳴らし終えた状態の方が良いそうだよ」
心桜「そうなんだ。あたし、いつでも鳴らせるように、ネジをいっぱいまで回してたよ」
時崎「それだと、オルゴールに負荷がかかった状態になるからね」
心桜「なるほどねー。これからは、オルゴールにも優しくするよ」
時崎「今までもそうだったんじゃないの?」
心桜「あはは! そだねー! ありがと!」

もう一度、オルゴールを抱きしめる天美さん。その様子を見て、さっきの事を思い出し、再びこそばゆくなってくると同時に、天美さんのとても良い表情を写真として残したくなった。

時崎「天美さん!」
心桜「!?
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