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翠碧色の虹
第三十六幕:太陽を想う虹と
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写真機を構えると、天美さんはこっちを見てすぐにさっきと同じようにオルゴールを抱きしめて目を閉じてくれた。俺が残したいと思った表情。その機会をもう一度くれた事に感謝しつつ、撮影する。

時崎「ありがとう! 天美さん!」
心桜「こっちこそ! でも、お兄さん、オルゴールにも詳しいんだね。正直、まだ驚いてるよ」
時崎「実は、オルゴール館の人に教えてもらったんだ」
心桜「オルゴール館って、隣街の?」
時崎「そう」
心桜「あのお店、高級品ばかりじゃなかった?」
時崎「そうみたいだけど、手作りオルゴールもあったよ!」
心桜「手作り!? 前は無かったけど」
時崎「そうなの? 店員さんがとても丁寧に教えてくれたよ『お客様はとてもこのオルゴールに思い入れがあるんですね』って言われた」
心桜「あはは・・・キャラクター入りのオルゴール。お兄さん、ちょっと恥ずかしくなかった?」
時崎「直す事に必死で、そんな事考える余裕は無かったよ」
心桜「そっか。このオルゴール、つっちゃーがあたしの誕生日にくれたんだ」
時崎「そうだったのか・・・それで・・・」

七夏ちゃんからの誕生日プレゼント。それが、どれだけ大切な物なのか俺にも分かる。

心桜「つっちゃーが、ちょっと前から好きな本を買うのを我慢してたりしてた理由も分かって、あたし、とっても嬉しかったんだけど、なんか素直に嬉しいって言えなくて・・・でも、つっちゃーは、それも分かってくれてて」
時崎「・・・・・」
心桜「壊れたオルゴールを見て、色んな事を思い出しちゃってさ」
時崎「なるほど」
心桜「今まで、当然のようにあった物が無くなりかけるとどうなるのか、よく分かったよ」
時崎「天美さん・・・」
心桜「本当は、分かってたはずなんだけどね」
時崎「!」
心桜「昨日、つっちゃーと一緒に寝ててさ、オルゴールが壊れても、あたしとの関係は壊れないよって・・・そう言われてなんか、あたし自分が凄く恥ずかしくなったよ」
時崎「天美さんが怒ってたのも、七夏ちゃんの事を大切に想ってるから、現れ方の違いだと思うよ」
心桜「ありがと。つっちゃーに送ってもらって家に帰って、あたし、まだまだ子供だったなって・・・」
時崎「え!?」
心桜「な、なんでもない!」
時崎「???」
心桜「お兄さん・・・ごめん。あたし、なんでこんな事、話してるんだろ?」
時崎「さあ。でも、天美さんと七夏ちゃんの事がまたひとつ分かって嬉しいよ」
心桜「お兄さんの昔の思い出も話してよね!」
時崎「え!? また機会があればね! じゃあ、俺はこれで!」
心桜「あれ!? 急によそよそしくなった!」
時崎「いや、そろそろアルバムの作業に戻らないと・・・それに、俺の思い出話しは七夏ちゃんや高月さんと一緒の時の方がいいかなと思って」
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