530部分:第三十一話 ノートゥングその十一
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第三十一話 ノートゥングその十一
「だからだ。そこにある国もだ」
「ドイツの中で。全てが行われますか」
「バイエルンはドイツの中で。例えかなりの権限が与えられても」
それでもだというのである。
「ドイツ、プロイセンの中にある」
「属国ですか」
「そうだ」
まさにそうだとだ。王は言い切った。
「バイエルンはプロイセンの属国となるのだ」
「つまりバイエルン王は臣下になるのですね」
ホルニヒにもわかった。この現実が。
それでだ。王に対してだ。無念の声で話したのである。
「かつての神聖ローマ帝国と同じく」
「そう考えられるな」
「しかしそれでもですね」
「あの頃は実質的に独立していた」
とりわけ三十年戦争の後はだ。そうなっていた。あの戦争は確かにドイツという国、神聖ローマ帝国を破壊した。だがそれと共にだったのだ。
バイエルン、他の国々も国家になれたのだ。それまでの領邦国家から独立国家となったのである。それぞれが外交権まで持つ。
しかしそれも終わるのだった。新しいドイツ帝国の誕生と共に。
王はドイツ帝国の誕生を喜ぶ。しかしそれと共にだった。
「バイエルンが消えるのだ」
「陛下は王のままですが」
「しかしドイツ帝国の中で。その中の一地方の王に過ぎなくなる」
その通りだった。バイエルンもそうなるのだ。
だからこそだ。王は言うのだった。
「それは運命だ。私はカトリックだが」
「予定説ですか」
「そうだ。新教徒のそれになるが」
それでもだとだ。王は話してだった。
「神は全てを定められていたのだ」
「ドイツ帝国の誕生とバイエルンの属国化も」
「そして」
「そして?」
「私自身の運命、為すべきこともだ」
また見た。その目に城を。
その城を見つつだ。王はホルニヒに話すのである。
「この現実が醜くおぞましいものだとしても」
「それでもですか」
「そうだ。私はこの世界に美を築こう」
その果たすべき運命をだ。王は見ていた。
そうしてだった。王は今その為にだ。全てを考えていた。
王にとっても為すべきことははじまっていた。その中でだ。
ベルサイユ宮殿でのドイツ皇帝の戴冠式がはじまった。しかしそこには。
バイエルン王の姿はなかった。このことにだ。
ドイツの諸侯達もプロイセンの貴族達もだ。怪訝に思わざるを得なかった。
壮麗な宮殿、バイエルン王が愛している筈のその宮殿の中でだ。彼等は困惑さえ見せてだ。このことをひそひそと囁き合うのだった。
「風変わりな方だが」
「それでもだ。幾ら何でもだ」
「諸侯の中でお一人だけおられないというのは」
「しかもだ」
尚且つだというのだ。
「バイエルン王はドイツ諸侯の中で随一の方だ」
「ヴィッテルスバッハ家の家柄
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