暁の奇襲
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海岸線を黒く白く埋め尽くすように此方に向かってくるのは、海面すれすれを飛ぶ深海棲艦が飛ばしてくる艦載機の群れだ。それも無数に。まるで10隻以上の空母棲姫が一斉に発艦させたかのような物量だ。しかも海面すれすれを飛んでくるお陰で、機銃掃射の効果が薄い。夜間飛行から早朝に奇襲。そして艦載機の飛び方。これではまるで……
「パール・ハーバーの真似事でもしようってのか糞が!」
パール・ハーバー。日本がアメリカに仕掛けた奇襲攻撃。その戦果は港と多数の艦艇を破壊し、アメリカの怒りを買い、航空機の有用性をまざまざと見せつけ、太平洋戦争の火蓋を切って落とした出来事だ。それを深海棲艦が、存在する国は違えど日本の鎮守府に仕掛けようとは何たる皮肉か。
「あの腐れ烏共を生かして帰すな!1つでも多く叩き落とせぇ!」
窓から身を乗り出して提督が叫ぶ。艦娘の宿舎から、夜警の詰所から、様々な所から艦娘達が飛び出し、各所に配置された機銃座に取り付いて上空の敵機を狙う。平和に1日が始まるはずだった鎮守府の敷地内は突如として硝煙の臭いと炎舞い踊る戦場へと化した。
「クソッタレがぁ……っ!」
その慟哭を向けたのは果たして、敵機に向けてか己自身に対してか。いつも不敵に笑って泰然自若に構える提督には珍しい、明らかな動揺。そのせいで提督は窓に向かって突っ込んでくる深海棲艦の戦闘機に気が付くのが遅れた。
「しまっ……!」
「司令、伏せて!」
咄嗟に早霜が飛び掛かってきて、提督を押し倒した。強かに顎を床に打ったが、そんな事はどうでもいい。何故なら、突っ込んで来た戦闘機が機銃掃射をして執務室が穴だらけにされたからだ。早霜が押し倒してくれていなければ、穴だらけになっていたのは恐らく、執務室ではなく提督自身だっただろうから。
「司令、このまま。攻撃が止むまで、このまま……」
早霜が提督を床に押さえ付けたまま、耳許でそう囁いた。その身体は小刻みに震えていた。床から伝わってくる爆発による震動は、それから1時間近くも続いていた。
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